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♪Questo♪Momento♪ 第7番「ファラオの娘の悶絶」
 今回はヴェルディのオペラ「アイーダ」を。
 (「ファルスタッフ」は最後の最後にとっておくことにいたしましょう。)

 「アイーダ」といえば、第2幕第2場の凱旋行進曲が有名すぎるほど有名。
 近年はサッカーの応援でも使われ、そのメロディはクラシック・ファンでなくとも知るところとなりました。

 「アイーダ」のあらすじを簡単に紹介しておきますと。
 舞台は古代エジプト。エジプトに囚われの身となっているエチオピアの王女アイーダ。
 彼女はエジプトの若き将軍ラダメスと愛し合っているが、エジプトの王女アムネリスもラダメスを愛している。ふたりが愛し合っていることを知り、激しく嫉妬するアムネリス。
 そんな中 ラダメスはエチオピアを完全に制圧し 英雄となる。
 しかしエジプトを離れて暮らすことをラダメスに訴えかけるアイーダ。ラダメスも今の栄光を捨ててアイーダとの愛に生きることを決心するが、アイーダに漏らしてしまった軍事機密を エチオピア王アモナスロ (アイーダの父) に聞かれてしまい、彼は一転 罪人に。
 ラダメスはアムネリスの助命の説得も聞き入れず、裁判で無言を貫き 地下牢での生き埋めの刑を言い渡される。死を待ちながらアイーダのことを思っていると、判決を予想してあらかじめ地下牢に忍び込んでいたアイーダの姿。ふたりは抱き合いながら死ぬ。

 地下牢、そんな簡単に忍び込めるもんなんかいな… と、高校時代初めてこのオペラを聞いた時に感じたものですが、まぁいいではないですか。オペラではそのくらいの不思議はつきものです。

 ところで「アイーダ」というと、凱旋の場などの壮大さから野外劇場で好んで取り上げられるなど、派手なスペクタクル・オペラと思われがちですが、実はヴェルディの円熟した作曲技法が生かされた 内容的にも充実したオペラです。

 私はヴェルディのオペラの中では、「ファルスタッフ」「オテッロ」の次、「トロヴァトーレ」と同等くらいで「アイーダ」が好きです。

 第1幕:ラダメスとアムネリスの二重唱からアイーダを含めた三重唱、あるいは第2幕:アイーダとアムネリスの二重唱は最も好きな場面。
 愛し合っていることをひた隠しにするアイーダとラダメス。それを疑っているアムネリス。その3人の心理描写が見事です。

 特に第2幕の二重唱では、アムネリスは ラダメスが戦死したというウソを使って、アイーダからラダメスと愛し合っていることを暴き出すのですが、そのドラマティックなこと!

 しかしそれ以上に好きなのは、第4幕 裁判の場面。
 命を救うという説得もむなしく、アイーダへの愛に死ぬというラダメスの決意に打ちひしがれるアムネリス。
 ラダメスの裁判が始まり、祭司たちが彼へ尋問する。しかし何も答えないラダメス。
 彼は地下牢での生き埋めの刑を宣告される。
 外でそれを聞いているアムネリスは激しく苦悶。

 裁判を終え、出てきた祭司。 −特に好きな部分はここ!
 アムネリスは祭司たちに「祭司よ あなたたちは罪過を遂行したのです! Sacerdoti, compiste un delitto!」と激しく詰め寄り、なじります。

 弦楽や金管の激しいトリルやドラムロールがアムネリスの悶絶を表す。
 ヴァイオリンが彼女の激情を補強するがごとく、同じ旋律をなぞる。

 しかし祭司たちは「彼は裏切り者 死なねばならぬ È traditor! morrà」というばかり。
 去っていく祭司たちの背中に「呪われるがいい! Anatema su voi!」と吐き捨てるアムネリス。
 激しい後奏。トランペットの強烈なトリル。

 手に汗握る場面です。アムネリスの無念が心に迫る。

 敵役アムネリスは高慢ちきで怖い女なんですが、好きなんですよねー。
 ヴェルディが彼女の激情を見事に音楽にしていることもありますが、愛のために死を選ぶアイーダとラダメスよりも、地位を利用しても愛を得られず苦悶するアムネリスに共感を覚えるのです。
 彼女のほうがずっと人間的。

 私がラダメスだったら、地下牢で「アイーダはせめて幸せに生きて、私の恐ろしい運命を知らないでほしい」なんて絶対思わない。
 「お前のせいで捕まってしもたんやないか。自分だけ逃げやがって…。一緒に死ぬのが筋やないかい!」と思うに違いない。
 でも 一緒に死ぬ気で地下牢に潜んでいたアイーダを見つけると一転、オレはなんてちっさい男なんや… と反省するんですけど。

 私にとって「アイーダ」は むしろアムネリスが主役。アムネリスに優れた歌手を得ていないと このオペラは締まらないと思います。

 アムネリスはこの後、事件を忘れることができるような愛を見つけることができたでしょうか。
 ファラオの娘に幸あらんことを…。

 ***

 サン フランシスコ・オペラのDVDを観て書ける。
 指揮は望むべきものが少なくないながら、主役3人の歌は見事です。
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 16:45
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