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♪Questo♪Momento♪ 第8番「しびれ むせぶように…」
 私、大好きなヴァイオリン・ソナタはたくさんあるのですが、不思議とヴァイオリン協奏曲で特に好き!というものが少ないのです。

 好きなのはプロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、ストラヴィンスキーのロシア連合軍 (?)。

 今回は プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番二長調Op.19を。

 この曲が作曲されたのが1915〜17年といいますから、プロコフィエフ20代半ばの作品。
 彼がペテルブルク音楽院を卒業したのは1914年ですので、プロになってまもなくの作品なのです。
 そんな若さで、このように新奇で大胆でありながら感動的な曲を書いたなんて と本当に驚いてしまいます。
 ロシア音楽界にとっては 希望の若き天才であったことでしょう。

 ところが1917年、ロシア革命が勃発。
 翌年プロコフィエフはアメリカへ亡命します。
 −ちなみに まず降り立った地は日本で、アメリカへの船便の関係で2ヶ月ほど日本に滞在しています。
 そんなゴタゴタがあったため、この曲の初演は1923年 (パリ) と大幅に遅れました。

 この曲の普及につとめたのは ヨーゼフ・シゲティ。
 プロコフィエフは彼を「私の協奏曲のよき代弁者」と呼んで、信頼と感謝を寄せていました。

 1953年3月 プロコフィエフが逝去した時、シゲティは来日中でした (6度の来日のうちの最後でしょうか)。
 それを知ったシゲティは急遽プログラムを変更し、この曲を演奏したのです。バックは上田仁指揮 東京交響楽団。
 アンコールでもこの曲の第2楽章を弾いて、大作曲家の死を悼みました。


 さて曲についてですが、緩−急−緩という構成で、全体的には抒情的な情緒が支配しています。
 とはいえ 和やかな叙情性ではなく、神秘的で妖しい雰囲気。

 また第1楽章第2主題は不穏な情緒。
 さらに展開部で高揚し、原始的 呪術的なイメージを喚起する不気味な音楽となるのです。
 再現部では第2主題は現われず 静かで神秘的な音楽に戻るものの、第2楽章:スケルツォは独奏ヴァイオリンの相当なテクニックを要するヴィヴァーチッシモで、毒々しい諧謔。

 そして第3楽章:モデラート、自由な変奏曲。
 不気味なリズムの刻み、ファゴットによる短い導入。
 独奏ヴァイオリンが入ると 不気味さと柔らかな表情が交錯。その微妙な変化に魅了されてしまいます。

 なんとも艶かしく妖しい音楽。
 細かいヴィヴラートをかけたヴァイオリンは不健康な悦びにむせぶよう。

 やがてバスが導入主題を繰り返す中、独奏ヴァイオリンが音階を上下させる。
 クレッシェンドして ヴァイオリンの動きは激しさを増し、クライマックスを作りますが、突然 治まってコーダに入る。

 特に好きな部分はここ!

 木管が優しく第1主題を奏する中、独奏ヴァイオリンが第1楽章の冒頭主題を静かに、細かなヴィヴラートをかけた高音で奏するのです。
 感じ入ったように しびれるように むせぶように。
 なんとも不思議な感動を呼び起こします。

 そして第1楽章の終わり方とそっくりに、フワフワと宙をさまよい、クラクラと覚束ない意識の中、消え入るように曲は閉じられるのです。

 「ポーギーとベス」を見たあとにこの曲を聞くと、愛欲とドラッグに溺れてしまうベスを思い出すのでした。

 ***

 ちなみに第3楽章コーダ直前のクライマックス部分、アンネ・ゾフィー・ムターは 楽譜の音符を少し逸脱させて、アパッショナートに表現しています。
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 18:13
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