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♪Questo♪Momento♪ 第10番「ふたつの山頂のあとの休息」
 ヨハン・セバスティアン・バッハは、モーツァルト、ベートーヴェンとともに挙げられるべき西洋音楽史上最も偉大な作曲家でしょう。

 その偉大な作曲家の中で 最も偉大な作品というと、どうなるでしょうか。

 もちろん人それぞれでしょうが、マタイ受難曲を挙げる人が多いのかもしれませんね。

 私としては、無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ集BWV.1001〜6。
 賛同いただける方、きっとマタイに劣らず多いことでしょう。

 ヴァイオリン1本で表される その奥深い世界たるや!
 私のようなドシロウトは、ヴァイオリン1本で 重音を用い、あんなに堅牢でスケール大きな曲を演奏して、演奏者の指はおかしくなったりしないのかな なんてことが思わず思い浮かびます。
 プロというのはスゴイもんだと、改めて。

 前々回、ヴァイオリン・ソナタには好きな曲がたくさんあると書きました。
 確かにそうなのですが、最も偉大な となると、この曲集ということになってしまいます。

 なかでも白眉はやはり、パルティータ第2番ニ短調BWV.1004 でしょう。
 全5楽章すべて短調で、暗い表情と厳しい緊張感に貫かれています。

 そして終楽章はシャコンヌ。
 長大で、厳しく、悲劇的なドラマさえ感じさせる あのスゴイ曲。
 この曲集のピークを形成しているとともに、対位法的奏法など バロックの先人たちが試みてきたヴァイオリン芸術のひとつの帰結であるように感じます。

 ところで。

 この曲集の全曲録音をBWV番号順に収録すると、CDの2枚目は、まず そのパルティータ第2番、そしてソナタ第3番、パルティータ第3番となりますね。

 シャコンヌで 重々しく緊張感あるパルティータ第2番を終えたあと ソナタ第3番ハ長調が始まるわけですが、その第1楽章:アダージョは静かに穏やかに始まり、一瞬心落ち着く間奏曲を聞く気持ちにさせられます。

 しかし違うんですよね。
 すぐに緊張感が戻ってくる。
 主題を離れると緊張感は緩むものの、また徐々に音を重ね、緊張感を高めていく主題が始まる。

 そして、すうっと第2楽章:フーガ アッラ ブレーヴェにバトンタッチ。
 「来たれ 聖霊よ 主なる神よ」の主題によるフーガ。
 
 長調で、暗くならず 優しい表情も見られるとはいえ 長大で スケール大きく、また4小節のひとつの主題のみで作られているという これまたスゴイ曲。
 シャコンヌほど緊張感を強いることはないにしても、偉大な音楽です。

 私は隣接するふたつの山頂を思い浮べたりします。
 峻厳なシャコンヌ峰より少し標高の低いもうひとつのピークであるフーガ峰。少し穏やかな形。

 フーガが終わると、第3楽章:ラールゴ。
 その遅く穏やかな音楽に聞き手はやっと緊張を解かれ、休息を得ることができます。
 ふたつのピークを越したあと 達成感を噛み締めながらの休憩。
 −シナノキンバイとハクサンイチゲの小さなお花畑を見ながら。
 穏やかな癒しの時間ですが、そこにはピークを過ぎてしまった一抹の寂しさが混じります。

 そして終楽章は 運動性ある快活なアレグロ アッサイ。

 明るく、喜ばしい気分いっぱいのパルティータ第3番ホ長調へとしぜんに移るのです。

 つまりCD2枚目は ふたつのピークまでの気分と、その後ではコロッと雰囲気が変わるのですね。

 今回は 特に好きな部分はここ!とは言いませんが、ふたつの偉大なピークの後 明るい気分へと移り変わる前の安らぎの「間奏曲」、これも重要な、愛すべき時間なのであります。
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 11:01
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