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♪Questo♪Momento♪ 第14番「ロンドは眠り 余韻を残す」
 モーツァルトのピアノ協奏曲というと もっぱら第20番K.466以降が有名で、それ以前のものというと 第9番K.271が最もよく演奏されるという感じでしょうか。

 私は第23番K.488、第27番K.595とともに、第13番ハ長調K.415が好きです。

 20代半ば、予約演奏会のため 第11番K.413、第12番K.414とともに書いた曲。
 「これらの協奏曲は 易しすぎも難しすぎもしない ちょうどその中間のもので、充分に輝かしく、聞いて楽しく、空虚さなしに単純で自然なものです。あちこちに音楽通だけが真に楽しめる箇所があり、しかも通でない人でも、なぜかは判らなくとも満足を覚えるような箇所があります。」
 父レオポルドに宛てた手紙の中で、モーツァルトがこの一連の3曲について書いた部分です。

 一般的に 穏健で心地よいものの、後期の傑作に比べて個性に乏しいとされているこの曲を 私が好きになったのは、CD店に勤めていた20年ほど前に購入した ある録音を聞いたことがきっかけでした。

 ランドフスカ(p) ロジンスキ指揮 ニュー ヨークp 1946年ライヴ (AS DISC)

 その粋で愉悦的な演奏に感動し、思わず店の後輩に電話をして 伝えずにはいられなかったほど。

 この演奏、オケによる前奏が終わり ピアノ登場のところで いきなり驚かされます。
 主題の前に 10数秒もの即興的なカデンツァを弾いているのです。

 速めのテンポで小気味よく 楽しく遊ぶような雰囲気で、大変饒舌。
 それはまさにチェンバロを思わせる演奏。

 自在なアド リブ、華やかな装飾音 (凝ったトリルを弾いている)、しゃれた節回し。
 時にオクターヴ高い音を使い (自作カデンツァでも高音を多用)、また高音のグリッサンドにエコーをかけて 鐘のような、チェレスタのような可愛い響きを出してみたり。

 含蓄やスケール感ある演奏ではありませんが、創意と感興、あるいはロココ的な洒脱さに溢れており、この曲の天衣無縫で天国的な美を極端な形で表した特別な演奏と言えるでしょう。

 とはいえ 他の演奏だと凡庸な曲なのかというと決してそんなことはありません。

 第1楽章の第2主題。
 あのうれし涙を湛えたような美しいメロディは、いつ聞いても感じ入ってしまいます。
 まさに「なぜかは判らなくとも満足を覚えるような箇所」。

 そして 第3楽章:ロンド。
 明るく弾むようなロンドAと メランコリックなロンドBの対比。
 中間部はAが短調によって ちょっとばかりシンフォニックに展開するのですが、中間部が終わってAの再現の部分がはっきりしないんですね。
 Aの3つめのメロディが出てくるあたりで、ひとつめのメロディは まるで中間部の続きのように 短調で再現していたのか、と気づく。ニクイ趣向です。

 そしてB再現がきて、最後 Aが長調で戻ってきたかと思ったら、すぐにコーダとなる。
 コーダとはいえ盛り上がらず、静かに。まるで眠りに誘われるようにデクレッシェンドし、そっと終わる。
 特に好きなところは第1楽章の第2主題とともに、最後のその部分。
 マーラーの交響曲第4番の終わり方を思わせもする 印象的な、余韻を感じさせる曲の閉じ方です。

 ***

 ランドフスカは第3楽章でも絶好調。即興の妙技はいよいよ冴え、5ヶ所の継ぎ目でカデンツァを弾いています。

 最初のロンドBのあとも違う曲を弾き出したのかと思うほど自由で長めなのですが、B再現のあとでは本当に長々と遊ぶ。
 Bをテーマとしたもので、多分にロマンティックでメランコリック。
 1分50秒ほどもあり、カデンツァの域を超え、7つの部分から出来ているこの曲に まるでもうひとつの部分が出来たよう。本来のBよりもずっと長いのですから!

 まったくカデンツァを挿入せず、内省的で寂しげなクララ・ハスキルとは正反対です。

 内田光子もランドフスカと同様、5ヶ所すべてに、--もちろんランドフスカのように盛大ではありませんが-- カデンツァを入れているのには驚かされましたが、案外 他にもあるのでしょうか。

 ***

 7つの部分からなるロンドですので、本来6つの継ぎ目があることになるわけですが、中間部から続けてロンドAに戻る部分は継ぎ目をぼやかして作られていますので、カデンツァが挿入できる部分は5ヶ所となります。
 ただ私は楽譜を持っているわけではなく、参考にできる資料があったわけではなく、第3楽章の構造はあくまで聞いての推測です。間違っていたらスミマセン。
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 19:52
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