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♪Questo♪Momento♪ 第15番「明鏡止水からエスプレッシーヴォへ」
 ブラームスはピアノ三重奏曲を3曲書いていますが、第2番Op.87は49歳、第3番Op.101は53歳という円熟期の作品。
 しかし第1番ロ短調はOp.8で、20歳の時の若書きなんですね。

 ヨアヒムを通じてシューマンに会うことができた頃。
 シューマンは「新音楽時報 Die Neue Zeitschrift für Musik」に「新しい道 Neue Bahnen」と題する有名な一稿で、ブラームスを世に紹介しました。
 <はたして 彼はきた。嬰児の時から 優雅の女神と英雄に見守られてきた若者が!>

 手放しの絶賛がプレッシャーになったのでしょう、ブラームスはそれまで書いてきた作品をかなり破棄してしまいましたが、このピアノ三重奏曲は厳しい自己批判をくぐりぬけ、その翌年の1854年 無事完成を見ました。
 同年 デュッセルドルフで クララ・シューマンらによって非公開初演、その後出版、翌年 ニュー ヨークで公開初演。

 ところが その36年ものちのこと (第2番、第3番が完成した後)、この曲の新たな出版にあたって、改訂がおこなわれました。
 ブラームスは友人への手紙に「少し櫛を入れて髪を整えただけ」と書いていますが、実際には第2楽章以外は ハサミとバリカン、ドライヤーと整髪料も使って(?) 大幅に手が入れられ、初版の3分の2ほどに短縮されたのです。
 若き情熱がほとばしる長髪がすっきり、キリリと整えられた感じでしょうか。
 近年 初版の録音が発売されましたが、私は未聴。元の形はどんなであったか聞いてみたいものです。

 とはいえ、やはり改訂版が素晴らしいことでしょう。
 麗しいメロディに満ち、またアイディアに溢れたこの曲、第2番、第3番よりも愛着を感じるところであります。

 まず序奏なしに奏される第1楽章第1主題の美しさ。これが心に染み入ってくるんですよね〜。
 最近気づいたのですが このメロディ、交響曲第1番第4楽章の有名な主題にちょっと似ていますよね。
 しかし この楽章、意外なことにアレグロ コン ブリオ。ブラームスはこの楽章をしみじみとではなく、快活に輝かしく演奏することを想定していた? ちょっと頭が混乱してしまいます…。

 第2楽章:スケルツォは まるでノムさんのボヤキのようなジジムサイ主題。
 この主題、私は好きではないのですが、トリオは一転 第1楽章を思い起こさせる麗しいもの。グッと心をつかまれてしまう。
 意外な取り合わせという感じがします。
 改訂ではコーダに手が入れられました。そう言われてみると、確かに精巧に出来た微妙さがあり、晩年の様式という感じがします。

 さて第3楽章:アダージョ。
 若い頃はよく解らなかったのですが、いつの間にか一番好きな楽章になっていました。
 晩年のピアノ小品、あるいはドビュッシーがふと頭を過ぎる、ピアノの静かな和音。雫が水溜りに波紋を描くように。
 そして弦の優しい合いの手。
 宗教的なものを感じさせるようなやり取り。最小限の動きが続きます。

 そして中間部、チェロによる切ないメロディ。“エスプレッシーヴォ” で音楽が動き出します。
 明鏡止水の境地から 人間的な感情を取り戻すかのよう。胸がしめつけられるような切ないメロディ。
 特にここが好き!
 この楽章、改訂で大幅に手を入れられ 短縮されたとのこと。もとの形がどんなであったか一番興味あるところです。

 終楽章はアレグロ、ロンド。3拍子。
 胸騒ぎのような不安げな主題。苦渋に満ちた もがくような音楽。
 しかし副主題は長調による快活・ヒロイックなもので、明るい気分を与えています。
 ただ この主題にはペサンテ (重々しく) の指示。第1楽章のアレグロ コン ブリオほどではないにしても、これもちょっとイメージが違うんですよね…。
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 12:34
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