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♪Questo♪Momento♪ 第17番「意地の悪い諧謔から突然の憂鬱」
 プーランクの2台のピアノのための協奏曲は、最も好きなピアノ協奏曲のひとつ。
 この百曲一所シリーズを始めた時から取り上げる気満々だったのですが、いざ その第1楽章の構造を確かめようとしてみると さっぱり解らない…。

 この楽章、大きく分けると 急−緩−急−緩 という部分からできています。
 2番目の「緩」は 最初の「急」のメロディをまったく使わず、新しいメロディによっている。
 最後の「緩」も ガムラン風の冒頭に似ているとはいえ 新しいメロディ。しかも大きな休止の後であるため、初めて聞く人は第2楽章が始まったかと思ってしまうことでしょう。
 このことからもこの楽章が特異な構造であるこということが分かるわけですが、そのためもあって基本となる第1主題、第2主題がどれかさえ 確信が持てない。

 いろいろ考えましたが、楽典素人 結局ギブアップ。
 何か資料が手に入るまで取り上げられないと諦めました。

 それ以来 積極的に古本屋に寄って 音楽書のコーナーを探してみてみよう と思っていたのですが、先日ある店で 音楽の友社「名曲解説全集」の第10巻・協奏曲IIIが。
 ひょっとして…と期待して覗いてみると、やはり この曲の解説があったのです!
 この第10巻だけしかなかったのですよ! それに探している曲があった。仏のご加護か 神のお導きか。

 さぁて さてさて、第1楽章の構造は…。

 意外や意外、序奏部が長かった!
 管弦楽の和音を伴った、 “平行四度で”(本による) 勢いよく滑り出すピアノの走句の後、同様に滑るように下降していく動機。それに続く強く跳ねるような動機。
 これが第1主題の第1候補だったのですが、見事違っていました。なんと “導入動機” とのこと。

 ほんなら第1主題は!? 
 なんと 管弦楽主体によって奏される、人を小バカにしたようなメロディだったのです (“Gai” の指示)。
 こりゃワカランわ…。

 第2主題は、その第1主題提示の後 強く跳ねるほうの導入動機を挟んで すぐ。
 カスタネットを伴ってピアノで奏される、人を食ったような おどけたメロディ。

 その後 トッカータ風の短い展開部があって、その後 急にテンポが落ち、「緩」。
 本には “エピソード風のレント部分” と書かれています。
 メロディアスであるものの大変メランコリック。先ほどまでの意地悪い諧謔から一転して 憂鬱に沈み込みます。

 特にここが好き!

 乾いた硬い音による おどけた、人を食ったような快活さと、深く沈み込んでいく陰鬱さのギャップ。
 プーランクが “パリのモーツァルト” と呼ばれる由縁であり、またプーランクを聞く醍醐味ですね。

 その後 第2主題の再現で おどけた、人を食ったような快活さが戻るも、大きな休止の後、最後の「緩」。
 1931年の植民地博覧会で聞いて衝撃を受けたというバリ島の伝統音楽ガムランを思わせる音楽。
 水面に反射する光のきらめきのようで、ここも大変印象的です。
 あの喧騒はどこへやら。神秘的な抒情のうちに そっと曲を閉じます。


 第2楽章はその抒情を引き継ぐラルゲット。
 とはいえ もっとシンプルな抒情で、その主題はモーツァルトのピアノ協奏曲第26番ニ長調K.537のラルゲットを想起させずにはいられません。

 ゆったりとした第2主題はセンティメンタルな気分。
 そしてその最後 (中間部に移る前)、第1ピアノによって、今度は第21番ハ長調K.467のアンダンテそのままという感じのフレーズが!
 それが終わる頃、管弦楽が軽くジャン! そして第1ピアノはそのそっくりフレーズをもう一度奏するのですが、ややテンポを上げて快活に、トリルを効かせて粋に歌うのです。まるでセンティメンタリズムへの羞恥のように。
 モーツァルトのパクリでした〜! とプーランクが舌をペロッと出して笑うよう。
 そしてモーツァルトの幻影を離れ、流麗な中間部に入るのです。

 この部分も好きですねー。プーランクの茶目っ気、最高です。

 ただし モーツァルトのアンダンテの借用部分2度目の茶目っ気は、プーランク自身の演奏でないと充分に発揮されないかもしれません。
 デュシャーブル、コラール、コンロン盤 (ERATO) は愛聴していますが、2度目もいたって真面目に “おセンチ” しています。

 あれれ、長くなりましたね。第3楽章については割愛いたしましょう。

 そうそう、「ニコ動」では プーランク、フェヴリエ、プレートルによるこの曲の演奏が見られますよ。
 プーランクはミスだらけですが、さすがに曲の精髄を突いており、才気に満ちています。
 (精髄、才気、ともにフランス語で “エスプリ” ですね)
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 23:05
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