RSS | ATOM | SEARCH
いろとりどりの歌 第33曲「吹くからに」

 もともとは 11年9月3日に書いたもの(間奏曲「むべ」)ですが、「いろとりどりの歌」の目次を作るに当たって改訂し、第33曲といたしました。

 ***

 第二十二番
 ≪吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ≫ 文屋康秀 (古今集・秋)

 = 山風が吹くとすぐに秋の草木がしおれてしまうので、なるほどそれで「山」「風」を合わせて「嵐(荒らし)」と言うのだろう =

 「嵐」と言う字が「山」と「風」からできていることのシャレですが、こんな単純な文字遊びを なぜ定家は秀歌百首に選んだのだろうと、以前は疑問で仕方ありませんでした。
 息子 朝康の 「白露に」 と対となる歌として(1枚の障子に2枚の色紙を貼るという目的のため)、父 康秀の 同じように秋の強風を題材とした歌を 半ば無理して選んだに違いない。

 しかし 定家が別の機会に編んだ「百人秀歌」でも選ばれているところをみると(百一首中九十七首が同じ歌)、やはり純粋に秀歌と認めていたのかなぁ と。

 現代の感覚を千年前の感覚に単純に当てはめられないということなのでしょう。
 当時の歌合せでは 新奇で新鮮として 拍手喝采であったのかもしれません。

 私などは「むべ」という言葉が使われていることが この歌の唯一の面白みと感じるのですが、それもまさに現代の感覚でしょう。

 「ムベ」という植物をご存知でしょうか?
 アケビの仲間で、同様に甘い実を付けます。
 天智天皇が滋賀・近江八幡へ行幸された時、8人の男子を持つ健康な老夫婦に出会った。天皇が老夫婦に長寿の秘訣を尋ねたところ、この地で秋に採れる珍しい果物を食べるためと答えた。
 そこで天皇は「むべなるかな (なるほど そういうことか)」の一言。
 これが この植物の名が「ムベ」となった語源とされています。
 近江八幡市は 近年までムベを皇室に献上していたそうです。

 このムベの実、秋には 近江八幡に限らず あちこちの山で見ることができます。一度食べてみたいと思いながらいまだに果たせずじまい。
 というのも 簡単に採れるようなところにはなかなか生っていないし、あったとしても鳥か何かが実を食べた後なんですよね。
 この歌は私に そんな秋の山歩きを思い出させるのです。
 ここまでくると 現代の感覚だけではなく、個人的な感覚ですが。

   

 文屋 康秀(ふんやのやすひで) は平安時代前期の歌人 (?-885年頃)。官位は正六位上・縫殿助。
 「古今和歌集」仮名序で「詞はたくみにてそのさま身におはず いはば商人のよき衣着たらんがごとし」と評されています。
 つまり、言葉遣いは巧みだが 中身が伴っていない。商人が立派な服を着ているかのようだ とのこと。う〜ん、辛辣。
 勅撰和歌集には5首入集。ただしそのうちの2首は朝康の作とも言われているそうです。
 なんだか あまりよくないイメージばかりですね。

author:, category:いろとりどりの歌(百人一首鑑賞), 00:14
comments(0), -
スポンサーサイト
author:スポンサードリンク, category:-, 00:14
-, -
Comment