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♪Questo♪Momento♪ 第27番「最後に現われる小さなバレリーナ」
 ハイドンの104曲以上もある交響曲。
 一部には標題がつけられていて、標題なしのものよりも演奏機会が多く 親しまれる傾向にありますが、実はハイドン自身によって付けられた標題は、第6〜8番の「朝」「昼」「晩」のみであることはよく知られているところ。
 ハイドン自身の命名ではないニックネイムが付けられた曲は何曲あるのか、WIKIPEDIAを覗いてみると 28曲ありました。

 ただし 第100番「軍隊」は、初演の新聞予告にすでに「軍隊交響曲」という名称が使われていたため、この曲を「軍隊」と名付けたのはハイドン自身ではないかという説もあるとのこと。−初めて聞きました。

 「時計」「驚愕」など 曲の (ただし一部分の) 印象をとって付けられるニックネイムは まぁ納得するとして、意味のないもの、間違って付けられたものなんかがあるのがマズイんですよね。

 第93番以降の12曲はロンドン訪問のために書かれたものですので、第104番だけに「ロンドン」と言うのはおかしいとか。
 第88番「V字」は、ロンドンの出版社がハイドンの交響曲の選集を出版する際に付けた 単なる整理用の番号にすぎないとか。
 第92番の「オックスフォード」は、オックスフォード大学の名誉博士号授与式で ハイドンがこれを指揮したと伝えられているためですが、実はハイドンがどの曲を指揮したのかは不明であるとか。

 第96番の「奇蹟」は、初演時 演奏会場のシャンデリアが落下したにも関わらず 誰もけがをしなかった という出来事に由来していますが、実は 別の曲の初演時であるとか。
 一説には 第102番であるらしいということですが、ニックネイムのない第102番を「真実の奇跡」なんかにすれば、もっと愛好されるようになるかもしれませんね。

 <曲の一部分の印象をとって付けられるニックネイムは まぁ納得するとして> と書きましたが、第83番「めんどり」はト短調、アレグロ スピリトーゾの悲劇的な曲調 (モーツァルトの小ト短調を連想させたりする) を基本としているのに、第2主題の木管によるD音の連続をとって「めんどり」はないだろう と思わせます。

 以上、作曲家自身が付けたものではないニックネイムに関しては あたくし 昔から懐疑的でして、その宝庫であるハイドンの交響曲を取り上げるに際して、ちょっくら書かせていただきました。
−ちょっとスッキリしたかな。

 わたしがハイドンの交響曲の中で一番好きなのは、ニックネイムなしの第98番変ロ長調 Hob.I-98 です。
 1792年の第1回ロンドン楽旅のために作曲したもの。

 まずは第2楽章:アダージョ、自由な変奏曲。
 主題はイギリス国歌「ゴッド セイヴ ザ キング」を思い出させるものの 引用というほどではないため 他人の空似だろうと思っていたのですが、なにせロンドン楽旅のための曲。やはりロンドンの聴衆を喜ばせる意図があった とする説もあるようですね。
 一方で 前年にモーツァルトが亡くなっており、その哀悼を込めたとも言われています。
 この楽章には「めんどり」のように 悲劇的な情緒に振りかける諧謔味のスパイスはなく、終始 悲しみと慟哭の気分でできていますし、また途中に現われる独奏チェロもいかにも哀悼曲らしい。
 さらにイギリス国歌っぽい主題は、同時にモーツァルトの「フィガロの結婚」の伯爵夫人のアリア「Dove sono」にも似ているではありませんか。
 その歌詞は Dove sono i bei momenti 楽しい時はいずこへ…

 これは偶然なのでしょうか。
 見る方向によって違うものに見える絵のように、ひょっとするとハイドンは ロンドンの聴衆を喜ばせると同時に、モーツァルトを哀悼するというトリックアートを作ってみせたのではないでしょうか。
 −なんて考えていると この楽章、モーツァルトの交響曲第41番ハ長調K.551の第2楽章:アンダンテ カンタービレにも似ているような気がしてきました。そう思い出すと ホント似ているように思えてくる。
 しかも同じへ長調ではないですか。
 K.551が完成したのは1788年8月。初演はいつか分かっていないようですが、モーツァルトの生前に演奏されたもよう。ハイドンが聞いていた可能性もありそうですね。

 逞しい想像力はこのくらいにしておきまして。

 実は 第2楽章以上に好きなのが、第4楽章:プレスト。
 ハイドンらしい快活で 底抜けに明るい楽想。
 展開部に入ると 突如ヴァイオリン独奏が現われます。短調になって不安な情緒となり、ちょっとした悲劇的なトゥッティがあるのですが、またヴァイオリン独奏が現われ、今度は明るい再現部に導きます。
 そしてコーダ。これがハイドンのユーモアの見本みたいなもの。
 テンポを落として静かに、ヴァイオリン部が途切れ途切れに第1主題を奏します。その後 突然速くなり 力強いトゥティ。これで快活に終わるのかと思いきや 中断。
 再度 遅めのテンポで静かに、ヴァイオリン部が途切れ途切れに第1主題を奏し出すのですが、特に好きな部分はここ!
 ピアノ あるいはチェンバロが、チロチロとオブリガートを奏でるのです。
 わずかですが その可愛らしいこと。突然バレリーナ姿の女の子が現われ たどたどしく踊るよう、というのは またケッタイな想像でしょうか。
 初演時はハイドン自身が演奏したということですが、最後の最後で 意外な音のプレゼント、いかしてます。
 そして今度こそ最後、トゥッティによって堂々と締めくくられるのです。
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 00:10
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