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♪Questo♪Momento♪ 第28番「ヴェネツィアの一陣の嵐」
 古楽 (バロックとそれ以前の音楽) の演奏は、ピリオド楽器 (古楽器) の隆盛によって、新しい時代を迎えました。
 単に元来の姿に近い音というだけではなく、それまでのモダン楽器による換骨奪胎演奏にはないリズムの躍動によって 生き生きとした音楽を聞かせてくれたのです。

 イル ジャルディーノ アルモニコ (“ハーモニーの園” というような意味) というイタリアの 当時 若手だった古楽アンサンブルによる、ヴィヴァルディの いわゆる室内協奏曲 (コンチェルト ディ カーメラ) の面白さに気づいたのは その録音が発売されて間もない時でしたから、1992年頃だったでしょう。私はCD店の店員でした。
 その曲と演奏の はちきれんばかりのエネルギーと躍動感、手に汗握るようなスリル。これがヴィヴァルディの面白さか!と目から鱗が落ちるような気がしたのです。

 残念ながら室内協奏曲についての資料を持ち合わせていないのですが (欧文ブックレットにも多くは書かれていない)、ごく小さな編成による協奏曲。
 6曲からなる有名なフルート協奏曲集Op.10のうちの5曲も 実はオリジナルは室内協奏曲であることは、有名なブリュッヘンの録音によって広く知られることになりました。
 さまざまな編成を持つ室内協奏曲の成立についてはよく分かっていないようですが、おそらくヴィヴァルディが勤めていたピエタ修道院の音楽院で 女生徒たちに演奏させるために作られたものだろうと言われているようです。

 イル ジャルディーノ アルモニコによる室内協奏曲集は4集発売されましたが、私は特に第4集が好き。
 このCDの1曲目のヘ長調RV.99。その冒頭、曲が始まる前、皆で合わせる息から気合充分!
 そしてリコーダー、オーボエ、ヴァイオリン、ファゴットと通奏低音というごく小さな合奏ながら、ダイナミズムに富み、愉悦に満ちた楽しい音楽が始まるのです。

 この曲にはちょっとした思い出があります。
 ちょうどこのCDにハマっていた時、店頭で 若い男性が ヴィヴァルディの室内協奏曲RV.99のCDがないか と私に尋ねてこられたのです。
 何たる偶然!と心の中で驚きながら、このCDを手渡した私。
 お客さんも、私がさっとCDを取り出してきたのに驚かれていました。
 なんでも 今度演奏するための参考にしたいとのこと。どんな演奏か一応確認するということだったか、店頭のプレイヤーでCDを視聴されたのですが、「ヘ長調なのに なぜ音が低いのですか?」と尋ねられました。
 「あっ! 古楽器演奏だからですわ。モダン楽器の演奏でないとマズいですね。」 実際演奏する人と聞くだけ人間の違いを思い知らされる私。
 ホリガーらによる演奏があったはずと探そうとしたのですが、これでいいです とお客さん。ご購入いただきました。

 さて後日。そのお客さんが私を訪ねてこられ、演奏が無事終わりました、CD参考になりました とわざわざご報告いただきました。
 しかし 私はうまいこと返事ができず、ひきつった笑いで お辞儀を繰り返すだけだったのです。
 それを察知したお客さんは「一応 ご報告をと思いまして…」と。
 私は「参考になったのなら嬉しいです」という言葉がなぜ出てこなかったのか と悔やむばかりでした。

 ちょっとしたことですので なにもトラウマになっているわけではありませんが、この曲、このCDとなると、いまだに思い出される出来事です。

 −などと RV.99に関するちょっとした出来事を長々と詳細に書いておきながら、好きな曲として紹介するのは このCDの最後に置かれたト短調RV.107にいたしましょう。
 まず初めに好きになったのはRV.99なのですが、その後 それ以上に好きになった曲です。
 編成はRV.99と同じ リコーダー、オーボエ、ヴァイオリン、ファゴットと通奏低音。
 RV.99はまるでビールのように辛口、スカッとさわやかという感じの曲ですが、RV.107は3つの楽章 すべて短調によっており メランコリック。
 とはいえ 第1楽章:アレグロの主題はやや滑稽な気分もあり、モーツァルトのピアノ協奏曲第23番K.488のアダージョを思い出させる第2楽章:ラールゴも 根は楽天的なものを感じさせます。
 それがいいんです。それこそイタリア、ヴィヴァルディ!

 そして第3楽章:アレグロ、特にここが好き!
 3拍子の、小規模ながらシャコンヌでしょうか。速いパッセージで疾走する音楽。リコーダーが先導するものの ここではひとり主役ではなく、オーボエ、ヴァイオリンと かわるがわるバトンを渡していく。ヴァイオリンがさめざめと泣く部分は特に印象的。
 オルガン、リュート、ファゴットがそうした音楽を下支えし、低音がブンブン唸る。
 そして まるで一陣の嵐のように 2分半ほどという短さでさっと終わってしまうのです。

 それにしても このような技術的に難しい曲を、ピエタの若き女学生たちがバッチリ弾けたのでしょうか。演奏技術は高かったという話ですが、どうなんでしょうね。

  
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 23:12
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