RSS | ATOM | SEARCH
♪Questo♪Momento♪ 第30番「天上の平和 下り来たれリ」
 前回 シャルパンティエの名を出しましたので、次はこれと決めておりました。それにしては遅くなってしまいましたが…。

 牧歌劇「花咲ける芸術」。

 シャルパンティエと言っても、オペラ「ルイーズ」で有名な近代のギュスターヴではなく、マルカントワーヌ (Marc-Antoine)。フランス・バロック、リュリと同時代に活躍した作曲家です (1634-1704)。

 CD店に勤めはじめて少し経った頃 バッハ以前の音楽の魅力に開眼したのですが、ちょうどその頃 ウィリアム・クリスティ指揮 レ ザール フロリサンによる この曲のCDに出会いました。
 
 アルモニア ムンディ フランスの国内仕様盤。今はなきANFコーポレーションが日本語解説書と対訳をつけたもの。ANF320という番号です。

 序曲と1幕5場からなる40分ほどの小さな音楽劇。
 内容は 音楽、詩など芸術の女神が、平和、不和の対立の中で、芸術の庇護者であるルイ14世を讃えるというもの。
 その徹底的なおべんちゃらには正直 居心地の悪いものを感じてしまうのですが、しかしそれを越えて音楽が素晴らしい。いかにもブルボン王朝の宮廷を思わせる洒脱な美のとりこになりました。

 ヴァイオリン、リコーダーなどの高音中心、しかも弱音を中心とした優しい音。リュートの軽やかなリズム。
 地に足が着いた感じではない三拍子の多用。
 さらに透明感あるソプラノを中心とした歌 (このCDではアニュス・メロン、ジル・フェルドマン) 。
 それらによって この世とは別の世界の物語を鮮やかに聞かせてくれるのです。

 とはいえ、単に春風駘蕩なだけの音楽ではないところが シャルパンティエの素晴らしいところ。
 第2場、第3場では不和と復讐の女神 (つまりルイ14世と その美しき御世を乱そうとするもの) が現われ、音楽は激するのです。

 しかし再び平和が訪れ、最終第5場:シャコンヌ。音楽の女神を中心とした歌。
 特にここが好き!
 柔らかな響き、美しいメロディ、洗練された典雅な美しさ!

 Charmante paix du ciel a propos descendue 美しき天上の平和が降りてきました
 que ne devons nous pas a tes rares bontés
 あなたさまのありがたき善に対し どれほどの感謝をすればよいことでしょう


 う〜ん、冒頭の歌詞を書き出しましたが、音楽のよさを紹介するには むしろ書かないほうがいいという感じですね。
 とにもかくにも ルイ14世に対する手放しの賛美です。
 歌詞対訳はないともの足りないし、あると なくてもいいという感じ。

 しかし それでも愛すべき音楽です。

 それはやはり、演奏の素晴らしさあってのこと。
 この録音はクリスティ指揮 レ ザール フロリサンのデビュー盤 (1981年録音) ですが、 “レ ザール フロリサン(Les Arts Florissants)” とは まさしく「花咲ける芸術」という意味。
 クリスティはこの作品名を 自分の合奏団の名としたのです。

 なんと言うしゃれた名前でしょう。
 実は私は この商売を始めるにあたって、店名を「ファルスタッフ」にするか「レザール フロリサン」 あるいは「フロリサン」にするか最後まで迷っていたのです。


 宮廷の音楽界を仕切っていたリュリに嫉妬と妨害を受け、ギーズ公夫人の庇護のもと 小規模の作品を 彼女の館で発表していたシャルパンティエ。
 そして貴族趣味、しゃれ者で気取り屋のウィリアム・クリスティ。(当該CDのライナーノート、金沢正剛氏による 若い頃のクリスティについての思い出は面白い)
 その幸せな結びつきのおかげで、300年もの間 埋もれていた美しい音楽が蘇り、貴族でなくても気軽に聞くことができるわけです。
 この作品、いまだにこのクリスティの録音しかないのではないのでしょうか。ますます貴重です。
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 08:57
comments(0), -
スポンサーサイト
author:スポンサードリンク, category:-, 08:57
-, -
Comment