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♪Questo♪Momento♪ 第33番「不気味なほどに神秘的なズレ」
 皆様はバッハのブランデンブルク協奏曲6曲の中ではどれが一番お好きでしょうか?
 人気投票をおこなったらどうなるのでしょう。
 やはり規模が一番大きく 充実していて、この曲集の顔とも言うべき第5番になるのでしょうか。
 第1楽章、チェンバロの長いカデンツァがカッコイイんですよね。
 もう10年以上前になるでしょうか、たびたび紹介させていただいているピアニスト・チェンバリスト 光永秀子さんを中心としたブランデンブルク協奏曲全曲演奏会を聞きに行ったのですが、そのカデンツァで 光永さんは猛スピードで手に汗握る演奏をされたことを思い出します。
 もちろん 全体的に速いテンポであったということです。若いメンバー中心で 活力ある演奏でした。

 私は若い頃は第2番が好きでした。トランペットをソロとした華やかな曲。
 しかしいつの頃からか 2つのホルンが活躍する第1番が一番好きに。世俗カンタータの名を借りると「楽しい狩こそわが喜び」という感じのこの曲。
 特に第4楽章:メヌエットの第1トリオ。
 メヌエットは木陰での優雅なダンスを想像したりするのですが、そんな中現われるオーボエ・ソロ (ファゴットとオーボエを従えた) による第1トリオの ちょっと哀愁を含んだ可憐さを偏愛しています。
 そういう変遷もありますので、人気投票も世代別に取ってみると さらに面白い結果が出るかも知れませんね。

 そしてまた最近、1年前くらいからでしょうか、新たな寵愛が現われました。
 第6番第1楽章:アレグロです。

 第6番は昔 父が一番好きと言っていた曲。
 私はその時 (中学か高校生の時です) もちろん嫌いではなかったものの、地味で特に好きにはなれんわぁと思ったものですが、やっとその味わいがわかったというところでしょう。

 第6番BWV.1051は、ヴィオラ ダ ブラッチョ (ヴィオラ) 2,ヴィオラ ダ ガンバ2,チェロ,通奏低音 (ヴィオローネ (コントラバス) とチェンバロ) という 独奏楽器、管楽器がないばかりか ヴァイオリンもないという特異な編成で、地味になるのは当然という感じ。

 この曲集はブランデンブルク-シュヴェート辺境伯クリスティアン・ルートヴィヒに献呈されたものですが、各曲はもともと以前の別々の機会に作曲されたものと考えられています。
 第6番ももとはバッハが楽長をつとめていたケーテンの宮廷楽団のために書かれたもので、バッハがヴィオラを、ケーテン侯レオポルドがガンバを演奏したのだろうと考えられているようです。
 クリストファー・ホグウッドは、ガンバの演奏に凝っていたレオポルドのために あまり難しくなく、それでいながら演奏しがいのあるパートを与えた としています。
 「バッハ伝」の著者で「ブランデンブルク協奏曲」という名の名づけ親フィリップ・シュピッタは、第6番第1楽章について「不気味なほどに神秘的」と述べているそうですが、そうした印象の原因は ヴァイオリンがない中低音でできていることとともに、ヴィオラが半拍ずれたカノンによって演奏されることでしょう。
 特にここが好き!
 微妙なズレが醸し出す不思議な魅力。
 こだまの精エコーが悪戯しているような。
 中低声部の音がウヮンウヮン響くということで 天国的というよりも冥界的な感じがしますが、まさに「不気味なほどに」というシュピッタの言葉に繋がりますね。

 私はこの曲集の録音といえば、ゲーベル指揮 ムジカ アンティクヮ ケルンの大胆で快活な古楽器演奏を愛聴していますが、第6番は超高速なんです。
 それはそれで面白いのですが、超高速では神秘的な魅力は出ないと気付きました。いまや この曲に限っては アレグロとはいえ ゆったりめのテンポをとるモダン演奏のほうに魅力が多いと感じています。

 ***

 ブランデンブルク協奏曲という名の名づけ親はシュピッタと書きましたが、この曲集、自筆譜にはフランス語で「種々の楽器による協奏曲集」と書かれているだけなんですね。

 
  ↑ 名手を迎えた明快で美しい演奏 イ ムジチの84年録音
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 20:55
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