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♪Questo♪Momento♪ 第35番「何か言いたげで ためらうような」
 父はFM放送を録音することでクラシック音楽を楽しむことが主で、レコード収集はほとんどしませんでしたが、エラートの1000円盤LPをまとめて買ってきたことがありました。おそらく複数回あったと思います。
 私はそれに結構 影響されたんです。私が聞いた はじめての室内楽は、その中にあったジャック・ランスロらによるモーツァルト,ブラームス*クラリネット五重奏曲でした。
 またヴェルナー指揮 ハイルブロン・シュッツ合唱団によるバッハ*カンタータが数枚あったことは、バッハのカンタータに親しむきっかけに。

 そしてフランス音楽やフランスの演奏家ですね。
 特にドワイヤンとパスキエ兄弟による フォーレのピアノ四重奏曲第2番はフォーレの室内楽の魅力に気付かせてくれました。
 ピアノのアルペッジョ、弦のユニゾン、流麗さと情熱、かっこいい!
 ピアノ四重奏曲は 第1番とともに比較的若い頃の作品で、メロディがわかりやすく 親しみやすい。
 しかし最晩年に作曲されたピアノ五重奏曲第2番、弦楽四重奏曲、ピアノ三重奏曲となると簡単ではなくなってきます。
 それらを楽しむようになったのはCD時代に入ってから。エラートのジャン・ユボーを中心とした室内楽曲集、あるいはEMIのジャン-フィリップ・コラールらによる室内楽曲集を聞くようになってからです。

 今回取り上げるのは ピアノ五重奏曲第2番ハ短調Op.115。
 1919〜1921年作曲といいますから 75歳前後、死の3年ほど前に完成した作品ということになります。
 相変わらず 流麗で心地よい流れがあります。第1楽章冒頭はフォーレらしいピアノのアルペッジョ。
 しかし半音階的で あいまいな調性。覚えてすぐ歌えるようなメロディは影を潜めています。

 でも いいんですよねぇ。
 決して地味な音楽ではなく、華やぎや熱いパッションがある。力強い表現意欲が感じられます。
 フォーレの音楽への評は 実際よりも内省的な面が強調されすぎているように感じるのは私だけでしょうか。
 第2楽章:アレグロ ヴィーヴォ、スケルツォ的な音楽もなんと魅力的なこと! 細かくすばやい動きの第1主題と息の長い主題。これが75歳の しかも聴覚に異常のあった人間の作る音楽でしょうか。諧謔的でありながら優美。

 この楽章も好きなんですが、それ以上に好きなのは、第3楽章:アンダンテ モデラート。
 ヴィオラ先導による開始・第1主題は、晩年のベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲をふと思い出させます。
 聴覚異常の大先輩ベートーヴェンの霊を呼び起こしたなんてことはないのかも知れませんが、考えさせられるシーンです。
 しかしピアノの優しく麗しい歌が入ってくると 水面(みなも) きらめく湖が開けたかのようにフォーレの世界。優しい微笑のようで寂しげな…。H-A-G-A が印象的。
 第2主題はポツポツと何か言いたげで ためらうような。
 特にここが好き!
 弦楽は内なる思いのよう。その思いは徐々に強くなり、音は上昇しながらクレッシェンド。
 やるせない思いが募るような。胸を締めつけます。まさにフォーレの真骨頂。

 しかし一旦途切れ、第1主題が回帰。ベートーヴェンだったのが ここでは「トリスタンとイゾルデ」がふと…。
 再び やるせない思いを募らせていく。絶望的になったかと思うと、弱音のG-F-D♯ の繰り返しが転調しながら長い上昇となる。憑かれるように息の長いクレッシェンド。
 単純な音形のクレッシェンドが迫ってきて 怖くなってきたところで、メロディは静かに下降。
 第1主題が回帰。それに第2主題に絡んで 徐々に正気を取りもどしていき、第2主題によって穏やかに曲を閉じるのです。

 心に染み入る曲です。

 第4楽章は自由なロンド。暗い楽想から明るい興奮の終結へと一気に駆け上がる。
 老いによって体力・気力が落ちていたとは信じられない輝かしさです。

 −ピアノ三重奏曲はまたいずれ。
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 00:01
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