RSS | ATOM | SEARCH
いろとりどりの歌 第50曲「風そよぐ」
 第50曲は 第九十八番
風そよぐならの小川の夕暮れはみそぎぞ夏のしるしなりける≫ 従二位家隆 (新勅撰・夏)

 詞書は −寛喜元年女御入内の屏風
 寛喜元年 (1229) 十一月、前関白藤原道家の娘 竴子 (藻璧門院(そうへきもんいん)) が、後堀川天皇の中宮として入内する時の屏風の歌。
 一年十二ヶ月の風物を月三題ずつ三十六枚描いたもので、それぞれの絵に相当する歌を当代の歌人数人に依頼して競作させ、題ごとに最も優れた歌を採用しました。

 家隆の歌で採られたのは七首。
 家隆はあらかじめ 定家に この時の歌を見せたのですが、定家は特にこの「風そよぐ」を絶賛しました。

 「奈良の小川」は京都・上賀茂神社の境内を流れる御手洗(みたらし)川。
 上賀茂神社本殿の東に奈良社という摂社 (本社と縁のある神を祭った社) があり、その前を流れているので そう呼ばれました。
 なお「なら」は「楢の木」をかけています。

 「みそぎ」は水によって身を清め、罪や穢れを払い落とすことですが、ここでは六月祓(みなつきばらい) の神事をさしています。
 六月祓は 半年間の心身の穢れを祓います。菅(すげ) や 茅(ち) で作った輪をくぐったり、人形(ひとがた) を作って それを自分の分身とし、川に流しました。

 = 風が楢の葉にそよいでいる。夕暮れの奈良の小川は涼しくてまるで秋のようだが、六月祓が まだ夏である証拠となっているのだ =

 昔は好きな歌だったのですが、よく考えてみると ちょっと疑問が。
 六月祓は六月末日の夕方から。翌日から七月、秋なのですから、秋のように涼しくても特におかしくないし、まだ夏なのに と言うのも妙である気がするのですが。
 どうなんでしょう…。


 今日8月7日は立秋。
 昨日が六月祓だったということになります。
 コンクリートとアスファルトで固められた現代の街では今の季節 まだまだクソ暑い。
 涼しい風が吹いて秋みたいだ なんて歌、ピンとこず、平安時代との季節感の違いを感じずにはいられません。
 とはいえ今年 関西では これから少し気温が下がるという予報。
 半月後には 朝晩だけでも涼しい風で木々がそよぎ、過ごしやすくなることを期待しておきましょう。


 藤原家隆(ふじわらのいえたか) は鎌倉時代初期の公卿・歌人 (1158-1237)。
 和歌を藤原俊成に学びました。寂蓮の婿だったという説もあります。定家と並び称されて、和歌所寄人となり、「新古今和歌集」の撰者のひとりに選ばれました。
 従二位(じゅにい) に昇り、邸が壬生にあったため、壬生二位と呼ばれました。
 歌集は「壬二(みに)集」。

 
 ↑ 平成8年 上賀茂神社を訪れた際の 奈良の小川と奈良社 −使い捨てカメラによるヘタクソな写真で恐縮です。それにしても16年前も前のことなんて信じられません…。

 もっと前の大学時代は、この上賀茂神社のすぐそばで下宿していまして、神社前から出ているスクールバスで学校に通っていました。しかしその時は平安時代のことなどまったく興味がありませんでした。

 ***

 百人一首を一首ずつ紹介するこのコーナーもちょうど半分の50曲目となりました。
 しかも調べてみますと、第1曲目を書いたのは偶然にも去年の8月7日でした。
 あと1年で百首全首、一応今のところ、目指したいと思っております。
author:, category:いろとりどりの歌(百人一首鑑賞), 21:29
comments(0), -
スポンサーサイト
author:スポンサードリンク, category:-, 21:29
-, -
Comment