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♪Questo♪Momento♪ 第41番「先生の娘へのラブレター付き絵葉書」
 約3週間ぶりの「ここが好き」となりました。
 今回は ド セヴラックの「セルダーニャ」にいたしましょう。

 ド セヴラックは近年よく知られるようになってきましたが、一応 簡単な経歴を。
 デオダ・ド セヴラック(M-J-A.Déodat de Séverac)。南フランス出身の作曲家 (1872-
1921)。パリ・スコラ カントルムで ダンディとマニャールに作曲を、ブランシュ・セルヴァとアルベニスにピアノを学びました。アルベニスとは 彼の助手を務めるほどの関係を築きましたが、師の死の翌年 (1910) からは故郷の南フランスを活動の中心とし、その自然や伝統音楽に根ざした作品を作り「田舎音楽家」と呼ばれました。
 ドビュッシーが「よい香りがする」と高く評したことは、近年のセヴラック受容に大きく貢献したといえるでしょう。

 5つの絵画的練習曲「セルダーニャ」は代表作のひとつ (1908-1911年作曲)。
 セルダーニャ (サルダーニャ) とはピレネー山脈にまたがり、スペインとフランスの境にある地方。現在でも野性味のある秘境であるようです。

 第1曲「二輪馬車にて」は、らばの引く馬車によるセルダーニャ到着。ウキウキとした気分。
 第2曲「祭り」は、ピュイセルダの祭りの情景。
 第3曲「村の楽師と落ち穂拾いの女」は「フォントロメウへの巡礼の想い出」という副題があります。巡礼の道中であった村の楽師、落ち穂拾いの女、そして中間部で祈りを表しているのでしょうか。
 第4曲は「リヴィアのキリスト像の前のらば引きたち」。
 リヴィアとは長期独裁政権が終わったことで 昨年盛んに話題となった国ではなく、フランスにあるスペインの飛び地とのこと。その教会に有名なキリスト像があるそうです。
 重々しい陰鬱な曲想。らば引きたちが聖歌を歌いながら、辛い現世を嘆き、安らかな来世を願っている情景でしょうか。
 独立して演奏されることもある この曲集の白眉と言っていいでしょう。

 終曲は「らば引きたちの帰還」。いそいそとした忙しなさを感じさせる曲。前曲とは対照的に諧謔味があります。

 さて「特にここが好き」は−
 代表曲の第4曲、短調による重々しい曲想の間に、まるで一条の光が差し込み わずかな時間 平安が訪れるような部分があり、そこを選ぶ予定だったのですが、今回 この曲について少し調べていて 興味深いことを知り とたんに面白くなって、変更することにいたしました。

 この曲集には、時々ふと現われる 大変印象的なメロディがあります。
 第1曲の中間部、第2曲では3度現われ、そして終曲にも。

 印象的で思わず口ずさんでしまうにもかかわらず、私はそのメロディが好きではありませんでした。
 10年以上前になるでしょうか、「リゲイン」という飲料のCMで評判になった坂本龍一の曲を思い出すのです。「癒し」的なメロディがいかにも通俗的でイヤでした。

 ところで 第2曲「祭り」はピュイセルダの祭りを舞台とした情景ですが、師アルベニスと出くわすという場面があるとのこと。
 セヴラックはこの曲をアルベニスの三女で画家だったラウラに捧げています。

 また おそらくアルベニスと出くわす場面とは別に、「魅惑的な巡り合い」と記されている部分があるとのことですが…
 ひょっとすると 例の癒し的なメロディが切なく 糸を引くように大切に奏でられる部分のこと?

 セヴラックはこの祭りでアルベニスとともに、ラウラと出会ったのではないか。
 「魅惑的な巡り合い」とは彼女とのことでないか。

 そういえば、このメロディ2回目の登場のあと、スペイン舞曲風に変奏されます。
 これこそアルベニスを表しているのではないか!?

 この曲は 祭りでの師とその娘との邂逅を描いた絵画であると同時に、ラウラへのラブレターであったに違いありません。

 このメロディが 少なくともこの部分では、単に心地よい癒しを振りまこうとするものではなく、セヴラックの恋心を表すものであるということを知ると、とたんに興味深く 面白く感じられるようになったのです。

 そういえば、このメロディによる第1曲の中間部には「希望」と書かれているようですが、セヴラックがセルダーニャを訪れたことは そもそも、アルベニスとこの地を訪れていたラウラに会えるかもしれないという希望があったのかも知れません。
 メロディは妖しく、エギソティックな表情を見せます。

 この曲の作曲が1908年からで、アルベニスの死はその翌年。ラウラは1890年生まれですから、祭りで出会ったのが1908年だとしても 彼女は18歳。
 かたやセヴラックは36歳。彼女の倍の年ではないですか…。
 彼は結婚していなかったのでしょうか。結婚・妻に関する記述が見出せませんでしたが、生涯独身だったのでしょうか。



 ↑ 古典的録音のジャン-ジョエル・バルビエ盤と 繊細で美しいビリー・エイディ盤
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 09:26
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