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♪Questo♪Momento♪ 第44番「ふたりは最後にそっと手をつなぐ」
 以前も書いたことがありますが、私はヴァイオリン協奏曲に特別好きな曲が少ないかわりに、ヴァイオリン・ソナタに愛する曲が多いのです。
 特にフランス製。

 今回は ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ を取り上げましょう。

 作曲は晩年の1923〜27年。他の曲を優先させていたためか、短い曲にしては時間を要していますね。
 初演は1927年。ピアノはラヴェル自身、ヴァイオリンは かのエネスコ。

 しかし献呈は女流ヴァイリニストのエレーヌ・ジョルダン-モランジュ。
 もちろん初演は彼女が弾くはずだったのですが、曲の完成した1927年、彼女はひどい関節炎のため 弾くことができなかったとのことです。

 モランジュの言によると、1923年、作曲を始めた頃ですね、ラヴェルはこんな手紙を送ってきたそうです。
 「このソナタはたいして難しくないでしょうから、あなたの手を捻挫させることはないでしょう。」
 嫌味っぽいですねぇ。しかも出来上がった曲は技巧的に充分難しい。

 彼女の技量に合わせて易しい曲を書く予定だったにもかかわらず、書いているうちにどんどん難しい曲になっていったのでしょうか。
 ひょっとすると彼女はまともに弾く自信がなかったため、仮病を使ったという可能性もあるかも。

 この曲に対するラヴェルの言は。
 「ここではパートの独立性が強調されている。わたしはピアノとヴァイオリンのソナタを書きながら、この独立性を課題とした。このふたつは互いに相容れない楽器であるが、ここでは対比のバランスをとろうとするのではなく、非両立性そのものを強調しているのである。」

 まさにそうですね。ふたつの楽器はなかなか相容れることなく、別々の調で奏したりして 調子っぱずれな響きを作ります。 

 第1楽章:アレグレット、第1主題もメロディ自体は美しいものながら そうした奇妙な響きを纏います。
 第2主題ではセンティメンタルな情緒を聞かせるかと思うと、ピアノのポツポツとしずくが垂れるような澄んだ響きのもと 瞑想的な雰囲気をかもし出します。
 展開部に入ると ふたつの楽器の齟齬を強調するように無機的な音楽となるのですが、やがて緊張が高まり、クレッシェンドして爆発、クライマックスを作ります。
 再現部はふたつの主題が交互に。ヴァイオリンは情緒的に奏されますが、ピアノはどこ吹く風と遊ぶ。
 とはいえ 奇妙な響きを纏いながらも 諧謔味・シニカルさはほとんど感じられず、それよりも微妙に変化する情緒が印象的な、不思議と心地よい音楽です。

 第2楽章:ブルース, モデラート。 
 ジャズ、ブルースの雰囲気が色濃い。不規則なアクセントによるヴァイオリンのピッツィカートはバンジョーを模しているよう。
 ピアノの単調な伴奏に ヴァイオリンはグリッサンドを使って ブルージーに身をくねらせる。
 アメリカ旅行からのインスピレイションとのことですが、酒場での様子をかなり写実的に表しているかのようです。
 そして複音による調子っぱずれな響き。
 前楽章とはまったく別物の品のなさが面白い。

 第3楽章:無窮動, アレグロ。
 第1楽章第1主題に出てきた動機でソロリソロリと始まり、16分音符の細かいパッセージによって とめどない運動性の音楽。
 やはりここでも ピアノによる複調の調子っぱずれな動機が現われる。
 疲れを知らない運動の音楽は シンコペーションによるジャズ風の気障なピアノの動機を巻き込みながらクライマックスへ。

 ラヴェルらしいハイセンスな音楽。カッコいい!

 さて「特にここが好き」はどこにしましょうか。

 第1楽章、再現部の最後の部分にしましょう。
 再現部、ヴァイオリンは第1主題と第2主題を交互に奏し、情緒的な音楽を作っているのですが、ピアノはそれをサポートせず、時々 茶化すように 第3楽章序奏に使われる調子っぱずれの動機を入れる。
 しかしクライマックスを築いたあとテンポを落とし、ヴァイオリンが優しい慰めに満ちたメロディを奏するのです。
 特にここが好き!
 そこではピアノは控えめながらヴァイオリンをちゃんとサポート。
 そのあとのコーダも ふたつの楽器は静かに、まるでやっと分かり合えたように。
 そして最後、ヴァイオリンはあたかもピアノにすべてを任せるように、9小節もの間 高いト音を引っ張り続けるのです。
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 23:18
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