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♪Questo♪Momento♪ 第46番「風雲児は貴族を煙に巻く」
 「セビーリャの理髪師」の次は その後日談のオペラにいたしましょう。

 モーツァルト:「フィガロの結婚」K.486 イタリア語によるオペラ ブッファ
 全4幕 台本:ダ ポンテ 作曲:1785〜86年

 あらすじ = アルマヴィーヴァ伯爵はロジーナ(伯爵夫人) とめでたく結婚。フィガロは バルトロ、バジーリオとともに 伯爵のお屋敷に召し抱えられている。
 お話はフィガロと女中スザンナの結婚式当日。
 伯爵は自分の結婚の際 浮かれてしまって、初夜権 (領内の女子が結婚する際 初夜は伯爵がつとめるという権利) を放棄してしまったが、伯爵夫人とも今や倦怠期、可愛いスザンナがほしくてたまらない。
 スザンナが伯爵から誘惑されていることを知ったフィガロは伯爵を懲らしめる作戦を考える。
 しかし計画はうまくいかないうえ フィガロは 女中頭マルチェッリーナとその弁護人バルトロから 貸した金が返せないなら約束した通り マルチェッリーナと結婚しろと迫られ、裁判となる。
 伯爵は事が思い通りに運びそうでほくそ笑んでいたが、裁判で驚くべき事実が発覚。捨て子として育ったフィガロは 実はマルチェリーナとバルトロとの間にできた子供だった。
 訴訟は取り下げられ、スザンナを含めた4人は一転仲良しに。フィガロとスザンナは晴れて結婚式を挙げることができた。
 しかし伯爵はスザンナとデートの約束をしている。ところがそれは伯爵夫人の罠。
 夜の庭園のデートに来たのはスザンナの服を着た伯爵夫人。伯爵はスザンナと思い込んで甘い言葉を囁くが、あろうことか 近くでフィガロが伯爵夫人を誘惑しているのを見つける。
 スザンナとのひと時のことなど忘れて フィガロをとっ捕まえ、皆を集めて わめき散らす伯爵。
 しかし自分が口説いていたのが伯爵夫人ということを知り、茫然自失。フィガロが口説いていたのは変装したスザンナだった。
 夫人の前に跪いて許しを請う伯爵。夫人は優しく許してあげる。

 「セビーリャ」に負けず劣らず 楽しいストーリーです。
 フィガロは頭が切れて 機智に富んでいそうで、彼の計画は「セビーリャ」同様 結局あまりうまくいかないのが面白い。それが波乱の展開を作っています。
 フィガロは奇遇に助けられ、伯爵夫人とスザンナの策略の成功によって 幸せを手に入れるのです。

 一方「セビーリャ」では明るく快活だった伯爵夫人ロジーナは、すっかりおとなの貴婦人となってしまう感じ。「フィガロ」では 女中の手を借りた策略によって なんとか夫の心を繋ぎとめようとするしかない嘆きの女なのです。

 しかし「セビーリャ」でのロジーナの魅力は スザンナに引き継がれます。
 スザンナ、カーラ ミア!
 第4幕 スザンナのコケティッシュなアリアは、私の知るオペラの中で最も好きな女声用アリアで、またスザンナは私の知るオペラの中で最も好きな女性キャラクターなのです。

 ***

 ド ボーマルシェの原作「フィガロの結婚」は 貴族批判に満ちた内容で、フランス革命前 ヨーロッパ各地で大ヒットしましたが、反体制的ということで たびたび上演禁止になっていたものです。
 ダ ポンテ&モーツァルトはそのオペラ化に際し 貴族批判を極力抑える配慮をほどこしたため、第1幕 フィガロのカヴァティーナにその痕跡をとどめる程度になりましたが、それにしても 神聖ローマ皇帝ヨーゼフ2世のお膝元ウィーンでよくぞ上演できたものです。

 映画「アマデウス」ではそのあたりが描かれていますね。
 ヨーゼフ2世が モーツァルトに その内容の危険性を指摘、上演を認めないのですが、モーツァルトが身振り手振りで その面白さを訴えると、皇帝は思わずクスリと笑ってしまう。すると場面は 初演のための稽古風景に移ります。

 印象的なシーンです。もちろん皇帝との直接交渉は創作ですが。
 しかしダ ポンテの回想によると、彼が直接交渉したらしい。回想が真実かどうかはわかりませんが、あのシーンは ダ ポンテの回想をヒントに作られたものなのでしょう。

 映画で オペラの面白さを伝えるのにまず持ち出されるのは 第2幕のフィナーレです。
 「夫婦喧嘩の二重唱で始まるんです。妻の女中が現われて三重唱、ああ なんて面白い場面なんだ! 女中の夫が現われ四重唱、庭師が現われ五重唱、どんどん続いて八重唱! 陛下 これが何分続くと思われますか? 20分ですよ! レチタティーヴォなしで! 芝居で8人が同時に話せばうるさいだけですが、オペラでは完璧なハーモニーになるのです!」
 
 私はこの映画が日本で封切られた時 映画館で見て、大いに感動したのですが (忘れもしません、大学受験に失敗し 浪人することが決まった頃でした)、この場面で興奮していました。
 そうだ、このオペラの最も素晴らしいのは いくつもある有名なアリア以上に第2幕フィナーレ! よく知っているではないか!と。

 フィガロの計画の不徹底さのために、伯爵に小姓ケルビーノとの浮気を疑われ、窮地に追い込まれてしまう伯爵夫人 (二重唱)。
 ケルビーノを小部屋に隠していると思いきや、そこから出てきたのはスザンナ (三重唱)。形勢は一気に逆転、伯爵は平謝り。
 そこにフィガロ登場 (四重唱)。早く結婚式をと伯爵に迫るが、私をだまそうとしていただろうと伯爵に責められる。すっとぼけるしかないフィガロ。
 庭師アントーニオ登場 (五重唱)。人間が庭に落ちて 逃げていったと訴える。
 伯爵はケルビーノに違いないと気付くが、それは私ですとフィガロの機転。
 飛び降りた際にケルビーノが落とした辞令の紙についてのツッコミもなんとか切り抜け 一件落着と思いきや、マルチェッリーナ、バルトロ、バジーリオの3人登場 (八重唱)。
 フィガロの借金契約書を盾に、フィガロはマルチェッリーナと結婚すべきと訴える。一同大騒ぎのうちに幕。

 あらすじでは伝えることのできませんが、いろんな出来事が次から次へと出てきて、登場人物の形勢は逆転に次ぐ逆転、それぞれが一喜一憂。
 モーツァルトは それこそ20分間、自然な会話の流れを作りながら 音楽の調子を巧みに変化させ、登場人物の心理の動きをドラマティックに描いているのです。

 フィガロの機転が大活躍する場面でもあります。
 かなり強引なのですが、あの手この手でのらりくらり。伯爵をごまかすには充分というところでしょうか。

 飛び降りたのは本当にお前かと 伯爵に問い詰められる部分。

 Là rinchiuso aspettando quel caro visetto …
 あの中で彼女を待っておりますと ただならぬ物音がして、だんな様の怒鳴り声
 手紙は私が書いたこともありまして、怖くなって慌てて飛び降りたのです
 そのせいで足の筋を痛めてしまいました


 伯爵をだます手紙を書いたことをさっきまでとぼけていたのに、今度はあっさりと認めてしまう。
 また足を痛めたと言って 急にびっこを引き出す。
 思わず笑ってしまうシーンです。

 弦楽の三連譜の連続が作り出す 速いテンポの緊張感ある音楽は lo scritto biglietto 手紙は私が書いた のところでテンポを落として一転 休符の隙間のある間の抜けた音楽となり、フィガロの思いつきの嘘と小芝居を表わします。
 そしてこのあと アンダンテ 8分の6拍子に調子を変えて、新たにケルビーノが落とした辞令の紙のことで追求される部分に。

 ここのちょっとした変化ひとつとってもなんと素晴らしい!
 まさにモーツァルトの天才が遺憾なく発揮された音楽です。
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 11:39
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