RSS | ATOM | SEARCH
♪Questo♪Momento♪ 第48番「深夜の鐘の歌から大いなる正午」
 今回は第1番、第6番で 交響曲第6番,第9番を取り上げて以来となるベートーヴェンを。



 ベートーヴェン:ピアノ ソナタ第31番変イ長調Op.110  出版:1822年



 ミサ ソレムニスの合間に書いた3つの最後のピアノ ソナタ、その2番目のもの。



 第1楽章:モデラート カンタービレ モルト エスプレッシーヴォ。変イ長調、3/4拍子、ソナタ形式。

 優しくしっとりとした開始。

 最初の4小節は序奏のようでありながら 実は主題の一部。その後 16分音符で刻まれる左手の伴奏に乗って可憐に歌われる12小節までが第1主題なのです。

 流麗なアルペッジョのあとに現われる変ホ長調の第2主題は 高音でキラキラときらめくようなアラベスク風。

 気負いや衒いのない麗しい、澄んだ音楽。最高です。



 展開部は第1主題の序奏的な冒頭2小節が 短調を基調として8回にわたって転調するだけ。作曲技法の実験のようでもありますが、充分味わいがある。



 そして するっと再現部へ。第1主題は36分音符の分散和音によって再現するのですが もとの変イ長調であるのは4小節だけで、それに続く部分は変二長調。

 また第2主題も変ホ長調ではなく ホ長調で始まり、その後 変イ長調に転調。

 ふと立ち止まって物思いをするように、少し憂いを見せながら…。

 いやはや素晴らしい! 最高です。



 第2楽章:アレグロ モルト。ヘ短調、2/4拍子、三部形式。

 後期弦楽四重奏曲にも現われる奇妙なスケルツォ的楽章。第1楽章の澄んだ心が急に下世話な現実に引き戻されるかのような違和感。

 しかしコーダは長調に転調 (ピカルディ終止)。まるで第3楽章へ入るための浄化がおこなわれるかのようです。



 そして終楽章。4つの部分からなります。

  1/ アリオーゾ、変イ長調、4/4拍子 2/ フーガ、変イ長調、6/8拍子

  3/ アリオーゾ、ト短調、12/16拍子 4/ フーガ、ト短調−変イ長調、6/8拍子

 速度はいずれもアレグロ マ ノン トロッポ。

 アリオーゾとフーガが交互に置かれるという大変特徴的な形式によっています。



 神韻縹渺たる開始。霧立ち昇る深山幽谷−

 そこから仙人住む洞窟にクローズアップ、仙人の思索は 12/16拍子の和音の連打を伴奏としたアリオーゾ:嘆きの歌に。

 とはいえ大仰な悲嘆ではなく、弱音による しみじみとした 思索的な嘆きです。



 フーガに入り、音は上向きとなり 明るい気分に。

 重厚な低音を響かせ 堂々とした音楽はクライマックスを形作りかけますが、再び嘆きの歌へ。

 ポツポツと途絶えがちの嘆きの歌。



 10の和音の連打。クレッシェンドしながら。

 再びフーガに入りますが なんと反行形で始まるのです。

 特にここが好き! まるで人生の記憶のテープを早回しで遡るかのよう。技巧が技巧で終わらず なんと奥深いことか!

 その後 メーノ アレグロとなって まるで急くように高揚し、対位法的な様式から離れ、変イ長調へ戻ってフーガの主題の展開へと発展し、歓喜のクライマックスとなるのです。



 現世を突き抜けるような感覚。なんと素晴らしい…。



 仙人というたとえを使いましたが、この楽章、私はニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」を想起せずにはいられません (毎度の妄想、申し訳ございません…)。



 第2のフーガの前の10の和音の連打は「第二の舞踏の歌」の深夜の鐘の歌を思うのです。

 鐘は12なので 数は足りないんですが…。



 マーラーの交響曲第3番第4楽章で歌われる

  O Mensch! Gib acht!  おお 人間よ! しかと聞け! の部分でもありますね。



 そして最後の高揚感と力強さに満ちた感動的なフィナーレは まさに壮大な哲学的物語の最後の部分を。



 よし! 獅子は来た。私の子供たちは近くにいる。ツァラトゥストラは熟れた。私の時は来た。

 これは私の朝だ。私の昼が始まろうとする。さあ来い、大いなる正午よ!
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 20:41
comments(0), -
スポンサーサイト
author:スポンサードリンク, category:-, 20:41
-, -
Comment