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♪Questo♪Momento♪ 第51番「ウィーンの悪童の手になるアルプスの民謡」

 フリードリヒ・グルダとジョー・ザヴィヌルの2台のピアノのための音楽集というCDを入手しました。 CAPRICCIO*67 175
 曲目は、ブラームス:ハイドンによる変奏曲Op.56b、グルダ:2台のピアノとバンドのための変奏曲、ザヴィヌル:ヴォルケイノ フォー ハイアー (Volcano for hire)。
 1988年5月のケルンでのライヴ。

 初めにグルダが客席に語りかける言葉。ドイツ語なので、いくつかの単語しか判らないのが残念…。音楽が始まったと思いきや、唖然とさせられます。
 ブラームスではなく、適当に遊んでいるかのようなふわふわとした音楽なのです。ピアノではなさそうな弦の音まで混じる (ピアノの弦を指で弾いているのか?)。しばらくすると 聖アントニウスのコラールの断片が現われますが それでもすぐには始まらず、まだまだ遊ぶ。
 ブラームスをもとにした即興の音楽なのかと思っていると、ふわふわとした雲の間から 主題が現われます。
 カッコいい! 生命力に溢れた演奏とともに、この出だしの 型にとらわれない 遊び心に溢れた 自由な創作に魅了されました。
 序奏なしで始まるこの曲の 序奏がわりということなのでしょう。

 次のグルダの作品はジャズ風。メランコリックな主題が バンドを巻き込みながら、さまざまに表情を変え 自由に変奏していきます。
 途中、聖アントニウスのコラールの断片がチラリと聞こえるのはさすがグルダの遊び心。コーダの前には控えめながら口笛が。

 ジョー・ザヴィヌル (Joe Zawinul) (グルダは最初の語りで “ヨーゼフ・ツァーヴィヌル” と発音) という御仁のことはまったく知りませんでしたが、WIKIによると ウィーン出身のジャズ・フュージョンのピアノ・シンセサイザー奏者とあります。1932年生まれとありますから、グルダの2歳年下。2007年死去ということはグルダの7年後。
 ウィーン音楽院で学ぶも、自分の求める音楽がクラシックではなくジャズだと気付いて渡米、その後すぐにバンドに雇われたそうです。
 また1970年代からシンセサイザーを駆使し、その発展に貢献、現代のミュージシャンにも多大な影響を与えている、とあります。
 「ウェザー リポート」というバンドで活躍したようですが、その名は聞いたことがあります。またその後のバンド「ザヴィヌル シンジケート」の名もどこかで聞いたことがあると思ったら、グルダとパラダイス バンドのCDにある グルダ作曲の “迷曲”「ジェネラル ダンス」で そのメンバーが参加していたことに気付きました。

 ザヴィヌルは基礎がしっかりしているからこそ、グルダとブラームスが弾けたといっていいのでしょうね。
 ふたりは同じウィーン出身ということもあって、互いに惹かれ合うところがあったのでしょうか。

 それにしても こんなCDがあるなんて まったく知りませんでした。グルダの晩年のライヴのCD、いろんなレーベルから出ているのですね。
 ハイドン変奏曲は確か他に録音を残していなかったでしょう。グルダの変奏曲とともに初めて聞きます。
 ともかく またひとつ グルダのゴキゲンな演奏を入手することができ、嬉しい限りです。

 ***

 ということで、今回はグルダの曲を選ぶことに。
 −ザヴィヌルとのCDについては少しだけ触れるつもりでしたが、長くなってしまいました…。

 あのジャンル不明の迷曲、聞くたびにウチの奥さんが文句を言う「ジェネラル ダンス」も、実は私 好きなのですが、さまざまな側面を持つ 愛すべきグルダそのものという感じの
 チェロとブラスオーケストラのための協奏曲 にいたしましょう。
 グルダを尊敬していたというハインリヒ・シフの委嘱で書かれた曲。ライナーノートを書いているシフによると、完成は委嘱から2年後の1980年。

 5つの楽章からなり、第1楽章:序曲,第2楽章:牧歌,第3楽章:カデンツァ,第4楽章:メヌエット,第5楽章:行進曲のフィナーレ。

 第1楽章、冒頭から度肝を抜かれます。
 チェロ、ブラスによる短くも攻撃的な序奏に続いて、なんとドラムがジャガジャガ! ギター、ベース、そしてブラス。
 シフは「アグレッシヴなロックのリズム、あるいはヴィヴラートなしなどのテクニックの面で難しかった」と言っています。
 それが3回演奏されるのですが、それに挟まれた間奏曲 (第2主題) は一転、木管を中心とした民謡的なひなびたメロディ。(A-B-A-B-Aの形)
 その落差は まさにキツネにつままれるかのよう。

 第2楽章: 牧歌、ホルンを中心とした美しいメロディ。その後 木管による軽快なダンス音楽。ともに いかにも素朴な民謡風で 極東の小国の人間にもアルプス地方を思わせますが、シフはオーストリア中部ザルツカンマーグート地方 (アルプスの峰々と湖沼が織りなす景観が美しい) を描いていると言っています。
 しかしその後 チェロで 洗練されたメランコリックな歌が現われます。(A-B-C-B-A)

 第3楽章: カデンツァはチェロのみ。荒々しい重音奏法の部分と、思索とためらいのモノローグの部分からなる即興的な曲。
 グルダはこの曲に関して、シフは現代音楽をほしがっていた と言っていたと思いますが、そういう要求に対するサーヴィスでしょうか。

 第4楽章は「冬の旅」を思わせる とぼとぼと歩くようなメヌエットと、フルートによる夢見るような長調のトリオ。イージーリスニングを思わせるような。

 終楽章は 昔のパチンコ屋の音楽を思わせる賑やかな行進曲。村の軍楽隊か? チェロはこ忙しいパッセージ (これもアルプス的?) 。それがやがてメランコリックな歌に。
 チェロのメロディをクラリネットが引き継ぐ部分がきて、その後 汽車が警笛を鳴らしながら 徐々に近づくるような部分が続きますが 大変印象的。チェロは相変わらずこ忙しいパッセージ。ドラムがジャガジャガ。
 クラリネットのメロディがアルプス的に変化し、チェロ、トランペットに引き継がれたあと、パチンコ屋行進曲、メランコリックな歌が回帰し、賑やかに曲を終えます。

 マ・カ・フ・シ・ギ

 グルダはオーストリアの民謡をベースにして、ロックなど 自分の好きな要素を織り込んだと考ればいいのでしょうか。
 それはまるで 革新的であると同時に伝統的であったグルダの音楽性を表わしているようですし、また 雑多で気分がコロコロと変わる音楽は、グルダの尊大で キザで 悪戯好きで あけすけで、寂しがりやで 人懐っこい、複雑な、愛すべき人間性をも表わしているような気がするのです。


 おそらくグルダ・ファンでなければ、どうしようもない最低の曲でしょうが。

 おっと、ここが好き!は…。
 シフの苦労の甲斐もなく、「ジェネラル ダンス」とともに うちの奥さんの非難に晒される、第1楽章のイモロックの部分といたしましょう (芋焼酎のロックではありませんよ)
 なぜか、マジで好きです。


   



 ところで、ウェザー リポートの「ヴォルケイノ フォー ハイアー」、ニコ動で見られました。1982年のライヴ。メンバーはザヴィヌル以外 みな黒人でした。

author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 23:50
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