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♪Questo♪Momento♪ 第60番「可愛いドラマティック・バラード」
 「プルチネッラ」を取り上げた際にも書きましたが、クラシックを聞き始めた中学生の時、自分で初めて買ったLPは アンセルメのロシア管弦楽曲集、2枚目は同じアンセルメで「展覧会の絵」でした。

 ロシア管弦楽曲集の第1曲目は「禿山の一夜」。

 当時の私にとって ムソルグスキーは面白い曲を作るカッコイイ作曲家でした。



 しかしその後の印象といえば長らく、他人の編曲の世話にならなくてはならなかった素人作曲家。



 再評価は オペラ「ボリス・ゴドゥノフ」、歌曲集「死の歌と踊り」「子供部屋」を聞いてから (恥ずかしながら「日の光もなく」は まだまともに聞いたことがありません)。

 ムソルグスキーは西洋風の洗練にとらわれず 斬新で、むしろ歌にこそ本領を発揮する天才的な作曲家だったのだと気づかされました。



 「死の歌と踊り」は4曲からなり、赤ん坊の死、乙女の死、老いた農夫の死、戦争での死を描き、また4曲とも「死」が語る部分を含むという強烈な作品。

 ムソルグスキーの歌曲の というにとどまらず、ロシア歌曲の代表作とも言えるもので 私も好きですが、今回 それとはまったく対照的な「子供部屋」を取り上げましょう。

 「オーヴェルニュの歌」で有名なネタニア・ダヴラツの歌がとってもチャーミングで、それをきっかけに好きになったのです。



 「子供部屋」 The Nursery 詞:ムソルグスキー 1868〜72年作曲



 7曲からなり「ばあやと」「隅っこに」「カブトムシ」「お人形と」「夕べの祈り」「猫のマトロス」「木馬に乗って」。

 7曲は4年の間の別々の機会に作曲されており、献呈者もさまざま。順に作曲家ダルゴムィシスキー、建築家ハルトマン、評論家スターソフ、兄の子供達、作曲家キュイの娘、スターソフの子供達に捧げられています (「猫のマトロス」のみ献呈なし)。



 話し言葉とその抑揚を大事にしたその歌のリアルなこと。感情や状況などを表わすピアノの効果も抜群。子供の世界の活き活きとした活写は比類ないもので、ムソルグスキーの子供に対する優しい眼差しが想像できる、言わばムソルグスキー版 子供の情景、子供の領分。

 簡単に覚えられるようなメロディでできているわけではないものの、難解さはまったくありません。



 「ばあやと」は 乳母にお化けの話を聞きたいが、怖くて他の話をしてもらう。しかしお化けの話が気になってしまう という子供の様子が描かれています。変拍子の駆使によって 落ち着かない、可愛いドキドキ感が見事に表わされます。

 また この曲に限ったことではありませんが、子供が盛んに呼ぶ「ニャーニャ」「ニャーニュシカ」(ともに乳母を意味する) という語感の可愛らしさも面白いところ。



 「隅っこに」は 乳母の編み物が台無しになってしまったことで叱られ、部屋の隅に立たされる子供。嵐のような乳母の怒りのあと おずおずと言い訳する子供。彼は犯人は猫だと訴えます。次第に乳母への悪口となって音楽は勢いづきますが、最後 勢いは衰え ベソをかくのです。



 「カブトムシ」は 外で積み木で遊んでいたところ、顔にぶつかってきたカブトムシ。子供は興奮状態のまま その驚きと恐怖を臨場感たっぷり こと細かに乳母に語ります。子供の耳朶にはカブトムシの羽音が鳴り響いている。

 しかしひっくり返ったカブトムシが死んでいるのかどうか気になって仕方なく、しつこく乳母に尋ねるのです。

 さながら小さなドラマティック・バラードですが、短い序奏、A-B-A'の三部形式があるようにも思えます。Aの部分は短く Bが主部のようですが。Aの部分はなかなかメロディアス。



 「お人形と」は 子供が寝る前に人形に語りかける様子。ここでは乳母は出てこず 劇的変化に乏しい可愛い子守唄なのですが、子供が乳母よろしく、早く寝ないと狼がさらっていっちゃうよ と人形をしつけていることに思わず笑みがこぼれます。そして最後 子供にまどろみがおとずれ うつらうつら。それもピアノで見事に表わしています。



 「夕べの祈り」は 寝る前の長い祈りの言葉を唱える子供。前曲の続きのように 穏やかで可愛い歌、と思いきや 子供はお祈りを早く終わらせたいのでしょう、イライラが興奮と化し 音楽はクレッシェンドして ものすごい早口に。しかし最後のところが思い出せないところで音楽は止まり、恐る恐る乳母に尋ねます。すると乳母はほとんど怒ったように言葉を教える。最後 子供はそれに対する不満を表わします。



 「猫のマトロス」は「カブトムシ」と似た 諧謔的なドラマティック・バラード。猫が鳥かごの鳥を狙っているのを なんとか食い止めることができた体験をママに語る様子。興奮を抑えきれないように武勇伝を話す子供。しかし最後は 指を怪我したと 猫なで声でママに甘えます。



 「木馬に乗って」は 木馬に乗って遊んでいる子供。ホップホップ、タタタタタ…という掛け声が可愛く 面白い。最初聞いた時には全曲の中で最も印象に残りやすい部分でしょう。ピアノが勇ましく走っている様子、高揚感を見事に表現しています。しかし子供は足を怪我をしてしまう。その部分のピアノ伴奏も絶妙! ママは乳母と違って 優しく接してくれる。うまく気をそらして泣き止ませると、子供はまた元通りに遊ぶのです。



 「ここが好き!」は男の子のドラマティック・バラード、第3曲「カブトムシ」にいたしましょう。

     

      ↑ ダヴラツ(S) ヴェルバ(p) の「死の歌と踊り」「子供部屋」 ・「子供部屋」での子供らしさの

         表現が抜群です。なぜか第6曲と第7曲の順番を入れ替えています




 高校生の頃、ムソルグスキーの歌曲の面白さの一端を聞いたことを思い出しました。

 NHKで放映していた「音楽の広場」(司会:芥川也寸志、黒柳徹子) での、立川澄登による「蚤の歌」。

 歌は和訳によっていて「昔 王様 蚤を飼い 蚤 ハハハハハ 蚤 ハハハハハ …」という詞は その1度しか聞いていないにもかかわらず、いまだに覚えているほど印象的でした。
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 11:34
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