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♪Questo♪Momento♪ 第63番「古代の王がくゆらせるパイプの煙」
 前回、次回はシューベルトを取り上げる予定を 続けてのモーツァルトに変更 と書きましたが、再び変更。ヴォーン ウィリアムズの登場とあいなりました。

 ヴォーン ウィリアムズは 取り上げようかなと思っていた曲が別にあったのですが、先日 商品 (ヒコックス指揮のVウィリアムズ管弦楽曲集) の試聴から 大変気に入った曲ができたのです。

 オススメのコメントを書くために 曲のことを知ろうとするものの 海外盤なのでライナーノートは英語。ネットで調べても資料にできそうなものはなし。そこで仕方なく ライナーノートの英語を前に 辞書を引きつつ 悪戦苦闘。

 感激と苦労が薄れないうちに ぜひとも取り上げたいと。



 ヴォーン ウィリアムズ:バレエ音楽「コール老王 Old King Cole 1923年作曲



 イングランド・ダンス協会のケインブリッジ支部のために書かれ、トゥリニティ カレッジで初演されました。



 「オールド キング コール」をご存知でしょうか? ナット・キング・コールではありませんよ。

 私は知らなかったのですが、イギリスの童謡である「マザー グース」のひとつで、ケルトの伝説上の王だそうです。



 童謡ではこう歌われます。

  Old King Cole was a merry old soul

  And a merry old soul was he;

  He called for his pipe, and he called for his bowl

  And he called for his fiddlers three.

  Every fiddler he had a fiddle,

  And a very fine fiddle had he;

  Oh there's none so rare, as can compare

  With King Cole and his fiddlers three.



 楽しそうな王ですが、YOU TUBE でメロディを聞いてみますと 意外にも短調で 哀愁あるものでした。

 --と思っていたら、たくさんある子供用アニメの動画をいろいろ聞いてみると、歌詞は同じながら メロディはさまざまではありませんか! (リズムはだいたい同じかな)

 その理由はわかりませんが、ともかくコール老王は イギリスでは現代でも大いに親しまれているようです。





 さて ヴォーン ウィリアムズのバレエは 7つの部分からなり、演奏時間は20分強というところ。ヴォカリーズの合唱、独奏ヴァイオリン付き。

 曲想はバレエだけあって、彼の音楽に往々にして聞かれる 起伏のなだらかな平原を思わせるような 一種 茫洋としたものでなく、メリハリがあり、親しみやすい。



 ストーリーですが、ライナーノートには コンスタンティヌス大帝の母であるヘレナ王妃が 父であるコルチェスターのコール王を訪問する場面を描いている、とあります。

 童謡では娘なんて出てきませんが、いくつかある彼に関する伝説の中には 出てくるものがあるようです。



 以下、ライナーノートのあらすじとともに曲を追っていきます。実際バレエを見ていないと、どの場面がどの音楽の部分かよく判らないところも多いのですが、可能な限り。



 第1曲:アレグロ モデラート。冒頭、童謡の 「コール老王」 に似たファンファーレ。

 王らしく威風堂々と、しかしその性格を表すように諧謔的に。

 その後「ラララ…」のヴォカリーズ。いかにも民謡的なメロディですが、ひょっとするとこれも Vウィリアムズ作曲ではなく、昔からある 別のコール老王の歌から採られたものなのでしょうか。ともかくこのメロディがこの曲の主要主題。

 簡単なファンファーレのあと、主要主題は弦楽の重々しく引き摺るような音楽に。ヘレナの登場でしょうか?

 ヘレナは王に 夫からの贈り物である東洋のパイプを献上します。主要主題は中華風に変奏。



 第2曲:パイプの踊り。ハープの爪弾きにのせて、3拍子の優しいメロディが弱音による低弦部、フルート、ホルンと引き継がれていきます。

 −特にここが好き! 美しい音楽です。老王がくゆらせるパイプの煙の踊りでしょうか。金管の強奏のあとの哀愁あるオーボエ独奏は特に最高。その後メロディは 立ち上った煙が霧消するかのように。そしてヴォカリーズ以降 調子は変わります。



 王は酒を持ってこさせて 第3曲:酒杯の踊り。パイプの踊りとは正反対、コミカルでブサイクな感じのする音楽です。



 さて 王は3人のヴァイオリン弾きを招き入れます。ヘレナが一番気に入った演奏者には褒美を取らせることに。

 1番目はジプシーによるモリスのジグ Go and 'list for a sailor (第4曲)。ヴァイオリン・ソロ登場。いかにもイングランドっぽい感じ。これも有名な古謡のようです。管弦楽で勇壮に盛り上がります。

 2番目のヴァイオリン弾きはロマンティックな 美しい民謡 Bold Young Farmer を演奏 (第5曲)。ヴァイオリン・ソロでしっとりと。ヴォカリーズも登場して幻想的に飛翔。



 最後のヴァイオリン弾きは 快活で愉快な曲 Jolly Thresherman (第6曲)。

 しかし突然終わって、第1曲冒頭のコール老王のファンファーレが奏されます。

 その後 レチタティーヴォ的な部分となりますが「ヘレナは2番目のヴァイオリン弾きに褒美を取らせようとするが、王はそれを無視、気に入った3番目のヴァイオリン弾きに褒美を与える。王は皆を晩餐の食卓へと導く」というところまでが描かれているのでしょう。

 クラリネット・ソロから舞曲に。ヴァイオリン・ソロを含む 憑かれたような3拍子の舞曲。その後 ヴォカリーズの合唱が入りますが、主要主題の変奏。



 その後、終曲:ソロ ジグ。褒美をもらい損ね、王について行かず残っていた2番目のヴァイオリン弾きによる踊りなのでしょう。

 最初は静かですが、憑かれたのような状態は続いています。徐々にクレッシェンドして 第7曲後半の音楽の変奏。主要主題の変奏がオケで現われた後、ヴォカリーズが入って より第1曲の原形に近い形になりますが、急にデクレッシェンド。

 静かなヴァイオリン・ソロ。ハープを伴奏に あの美しい Bold Young Farmer が奏されます。

 管楽による調子の狂ったような上昇音形。か細いヴァイオリン独奏が続く中、ハープの上昇音形が3度。

 ヘレナは彼にバラを投げ与えるが、彼はそれに気付かない、というところを描いているのでしょう。

 静かに曲を閉じます。





 面白い曲です。

 コール老王が ちょっとファルスタッフを思わせるところにも惹かれました。



 それにしても イギリス近代音楽は ドイツやフランス系の演奏者があまり取り上げないこともあって、独仏の音楽と同程度の面白さがある曲でも なかなか一般的に知られにくいという面があるのではないでしょうか。

 この「コール老王」も ひょっとすると国内盤で発売されたことがない?

 それを考えると ホルストの「惑星」の有名さはモノスゴイですね。
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 12:08
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