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いろとりどりの歌 第78曲「風をいたみ」

 第78曲は 第四十八番
 ≪風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけて物を思ふころかな≫ 源重之(詞花・恋)

 第二句までが「おのれのみ砕けて」を導く序詞。
 「風をいたみ」は「とまをあらみ」などと同様の用法で「風が激しいので」。
 波がどんなに激しくぶつかっていっても 岩はまったく動じることなく、波が散り々々に砕けるだけという様子に、いくらアタックしても 愛する女はまったく見向きもしてくれず、自分の心が砕かれ 乱れるだけ というイメージを重ね合わせた歌です。

 三省堂 例解古語辞典の訳をば。
 − あまりに風が激しいので、岩を打つ波が、おそいかかった岩はもとのまま、自分のほうだけあえなく砕け散る、ちょうどそれと同じで、相手はいっこうに心を動かすようすもなく、ただ自分だけが、いたずらに激しい恋につき動かされ、心が千にも万にも砕け乱れる今日このごろだ。−

 いつものことながら、なんと情感豊かな意訳!

 いっそのこと こんな訳はどうでしょうか。
 = オイラの心は激しい波さ 思いっきりよくぶつかってはみるが 岩みてぇなアイツの前に ただただ砕け散るばかり =

 源重之(みなもとのしげゆき) は 平安時代中期の官人・歌人 (生没年不詳)。清和天皇の皇子 貞元親王の孫。三河守 兼信の子。

 この歌の詞書は、冷泉院春宮と申しける時 百首歌たてまつりけるによめる

 冷泉院が東宮時代に奉った百首歌は、家集「重之集」に収められています。
 春夏秋冬各二十首に 恋・恨の歌各十首という構成になっており、形式の整った最初の百首歌として和歌史上貴重な存在とされています。
 ほぼ同じ時代に作られたものに、「曽丹集」の好忠百首 (曽根好忠 「由良の門を」)と、源順(みなもとのしたがう) 百首、「恵慶集」の恵慶百首 (恵慶 「八重むぐら」) があります。
 好忠百首は 序のあと、春夏秋冬・恋が各十首、古歌を冠と沓においた沓冠歌(くつかむりうた)三十一首、十干(じっかん) (きのえ・きのと…)、方角 (きた・うしとら…) の名称を詠み込んだ物名歌など、計百首にまとめて 源順に贈った作品。
 順百首は好忠百首への返しで、好忠百首とまったく同じ構成。
 (恵慶百首も好忠百首の返しといいますが、私は詳細を知らず。)

 歌を百首まとめ ひとつの作品として発表する百首歌は この時期に初めて試みられて 流行し、さまざまに形を変えて発展したのです。
 「百人一首」もその延長線上にあることは言うまでもありません。

 重之は 全国各地に赴任した後、995年 陸奥に下り、1000年頃 六十歳くらいで 同地で没したと考えられているとのこと。
 拾遺集初出で 勅撰入集六十八首入集。
 子には 勅撰集に多くの歌を載せる女子 (重之女) がいます。

 ***

 「日本百名山」「名水百選」など「百選」という企画はたくさんありますが、心を捉えやすいのですかね。ひょっとして 特に日本人が好きということがあるのでしょうか。
 かくいうアタクシも この百人一首 自己流解説とともに、「百曲一所」の完成を目指しているわけでございます。

author:, category:いろとりどりの歌(百人一首鑑賞), 23:57
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