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♪Questo♪Momento♪ 第70番「純情な伯爵の悲劇」
 9/1 弟の所属するアマチュアオケが演奏する ヴェルディ:「トロヴァトーレ」を聞きに行ってきました。
 入場無料、演奏会形式ですが、全曲、原語による上演です。
 指揮は 関西フィルのコンサートマスター ギオルギ・バブアゼ氏。

 ステージにはオケ。その前で 歌手は少し演技をしながら歌う。皆が出ずっぱりではなく、適宜 出たり入ったりしながら という形。
 合唱はステージの広さの関係で 観客席前方の片側 (ステージから見て左側) に陣取っていました。
 なお マンリーコのリュートを表わすハープはピアノで代用。

 無料のアマチュアオケの公演ということで 歌のレヴェルはまったく期待していなかったのですが、関西二期会を中心とした歌手陣。プロの歌におおいに満足しました。

 特にルーナ伯爵を歌った油井宏隆氏。
 若いかたですが、まさしく若々しく 力強く、感情表現豊かな歌を聞かせてくれました。
 ルーナ伯爵が好きな私は この役を中心にして聞きますので、本当にラッキーでした。

 一方 マンリーコは大変な役。
 どうするのか気になっていたのは 第3幕最後の有名な “Di quella pira” (あの恐ろしい炎) でハイC を出すのかどうか。
 果敢に挑戦。なんとか形にはなったというところでしょうか。
 しかし マンリーコ氏、この歌の3ヶ所で歌詞を忘れて (間違って) しまって ごまかして歌っていました。

 この歌で驚いたのは、繰り返しありで演奏していたこと。
 この歌の繰り返し、私は デル モナコ、テバルディのDECCA録音以外で聞いたことあったかな? という程度。
 ただし 繰り返しを繋ぐ部分は管弦楽のみで レオノーラの歌はなしでした。

 オケの奮闘もあって、演奏自体は 悪天候の中 行ってよかったと思える公演だったのですが、残念ながら大いに不満なことがありました。
 それはこのオペラ上演に関係する機関の偉いさんのお話が 各場ごとにいちいち入ること。
 達者な 親しみやすいおしゃべりと言えるのかも知れませんが、ストーリーの説明は不正確で 頼りなく、笑いを求めるようなベタベタは話しぶりは オペラへの集中を大いに阻害するものでした。
 オペラに詳しくない観客が中心であるゆえなのかもしれませんが、それなら パンフレットにもっと詳しいあらすじを書いておくほうがよっぽどいい。
 加えて 最後 スタンディングオベイションを強要されるにいたっては 怒りさえ感じました。
 かえすがえすも残念です…。

 ***

 ついでに 久しぶりに「ここが好き!」を。

 あらすじを書いておきますと −
 15世紀 スペインのアルゴンとビスカヤ。
 ルーナ伯爵には弟がいたが、赤ん坊の頃 あることがきっかけで病弱となった。それはジプシーの老婆による呪いのせいだということで、老婆は火あぶりの刑に処せられたのだが、この時 ルーナ伯爵の弟もいなくなり、処刑後の灰の中から幼児の骨が発見された。
 皆はルーナ伯爵の弟が死んだと思っていたが、実はジプシーの老婆の娘アズチェーナの子だった。アズチェーナは母が火あぶりにされる時、ルーナ伯爵の弟を盗み出し 火に投げ入れようとしたのだが、誤って 抱えてきた自分の子を投げ入れてしまったのだ。(最大のツッコミどころですが…)
 アズチェーナは 残されたルーナ伯爵の弟を わが子マンリーコとして育てる。将来の復讐のために。
 −オペラはルーナ伯爵、マンリーコが成人してからの話。ここまでのことは昔の話として語られること。
 ルーナ伯爵が思いを寄せるレオノーラは、ビスカヤ公爵に仕える隊長でトロヴァトーレ(吟遊詩人) となったマンリーコと恋仲だった。
 お互いが兄弟とは知らず争うマンリーコとルーナ伯爵。ついにマンリーコはルーナ伯爵に捕らえられる。
 レオノーラの命を賭けた助命嘆願も空しく、マンリーコが処刑されるその時、アズチェーナはルーナ伯爵に マンリーコが伯爵の弟であることを告白し「母さん 復讐は遂げた!」と叫んで倒れる。

 あらすじを書くと、むしろ前提のほうが重要という特殊なストーリー。
 題名は「トロヴァトーレ」で、表向きにはマンリーコとレオノーラ、ルーナ伯爵による恋のさやあての物語なのですが、実はアズチェーナによる復讐の物語なのです。

 しかしアズチェーナは 母の復讐のために育てたマンリーコに、母としての愛情を感じてしまっていた。最後 積年の恨みを晴らすことができたのですが、同時に愛する息子を失うという自らの悲劇をも迎えるのです。
 アズチェーナのそうした複雑な感情による結末こそ このオペラのストーリーの最大の妙味であるでしょう。

 一方 音楽的には。
 ヴェルディは晩年にかけて ドラマと音楽の一致を完成させていきますが、「トロヴァトーレ」は壮年期の作品で (1852年作曲 39歳時)、まだ前時代的な様式が残っています。
 中期までの特徴である「ブンチャチャチャ」「ブンチャッチャッ」という定型的な伴奏が多く顔を出したり、歌に装飾音が施されていたり。
 しかし あのシェーンベルクが「霊感に満ち溢れた」と形容したという、その魅力に溢れたメロディの数々!
 ヴェルディ中期最高の作品は「トロヴァトーレ」に間違いないでしょう (「リゴレット」とともに かな…)。

 高校の時に セラフィン指揮のLPを購入して以来、愛着を感じ続けているオペラです。
 一番最初に心を捕らえたのは “Di quella pira” でしたが、その後、第1幕第2場 ルーナ伯爵登場からフィナーレ、第3幕第1場 アズチェーナがルーナ伯爵に捕らえられての二重唱、第4幕第1場 レオノーラがルーナ伯爵にマンリーコの命乞いをする二重唱が 最も好きな場面となりました。
 どれも 豊かな霊感を感じさせる流麗なメロディでできた輝かしい音楽です。(今回は細かい部分のここが好き!は なしで…)

 3つともルーナ伯爵が登場する場面。私にとってはやはりルーナ伯爵が主役なのですね。
 セラフィン盤でルーナ伯爵を歌うエットレ・バスティアニーニの名唱の影響もあって。

 ルーナ伯爵のアリアが 好きな場面に入っていませんが…。
 第2幕第2場の “Il balen del suo sorriso” (彼女のほほえみ)。
 私には この純情な美しい恋歌が どうももうひとつ食い足りない気がするのです。

 でも ルーナ伯爵は実は女性の扱いがうまい色男ではなく、おそらく純情なんですね。
 第1幕第2場の振る舞いからもそう思います。

  

 ◇第4幕第1場 ルーナ伯爵とレオノーラの二重唱
 ピエロ・カップッチッリとライナ・カバイヴァンスカによる歌唱
  1978年 ウィーン・ライヴ 指揮:フォン カラヤン

 0'00〜 ルーナ伯爵のレチタチーヴォ マンリーコとアズチェーナを捕らえる
      ことができた満足と行方知れずのレオノーラを思う
 0'52〜 レオノーラが登場 自分の命と引き換えに とマンリーコの助命を嘆願。
      マンリーコへの愛の深さに ますます嫉妬を掻き立てられるだけの伯爵
 3'55〜 立ち去ろうとするルーナ伯爵を引き止めるレオノーラ。自分の体を
      捧げることを提案。伯爵はマンリーコを赦す
 5'00〜 指輪にしのばせた遅効性の毒薬を隠れ呑むレオノーラ
 5'13〜 マンリーコを救えた事を喜ぶレオノーラと おまえは俺のものと喜びで
      いっぱいのルーナ伯爵

 5'13からの部分ではテンポを落としているのが特徴的ですが、ソプラノパートに技巧的な箇所があるため、カバイヴァンスカの願いを カラヤンが聞き入れたのではないでしょうか。
 聞きに行った公演では、テンポを落とさず 相当な快速調だったため、レオノーラはきつそうでした。


  

 同じ公演の第3幕第1場 アズチェーナとルーナ伯爵の二重唱もありました。
 怪しい女を捕まえたと ルーナ伯爵のもとへ引き立てられたアズチェーナ。伯爵はいろいろと質問しているうちに、この老婆が昔 自分の弟を焼き殺したジプシー女に違いないと気付く。さらに彼女がマンリーコの母ということも判って 捕らえることが出来たことを一層喜ぶという場面。

 アズチェーナはフィオレンツァ・コッソット! セラフィン盤でも歌っています。その若き日の強烈な歌声と比べると もの足りなさもありますが それでも素晴らしい歌唱と言えるでしょう。フェッランドはジョゼ・ヴァン ダム。
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 11:30
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