RSS | ATOM | SEARCH
♪Questo♪Momento♪ 第71番「幼時に見た化け物たちのカーニヴァル」
 昨年9月以来の「百曲一所」更新。

 昨年末 メルマガで 年明けに「百人一首」「百曲一所」再開予定と書きましたが、父のガン発覚で そんな意気込みもふっとんでしまっていました。
 しかし 父の病状も落ち着き、また再開しなければ という気に。
 「百曲」はともかく「百人一首」のほうはあと19首ですから、やはりこのまま終わってしまうというのは気持ち悪い。

 といいながらも、まずは「百曲一所」から。

 といいますのも、いつもお世話になっておりますお客様とのメールのやりとりの中で、オーボエの話から、お客様が プーランク自身が参加した ピアノ, オーボエとファゴットのための三重奏曲のCD (ADES*14 052-2) のことを書かれていたのす。

  

 これは私の好きなCDの中でも10指に入るかも知れないほどのもの。
 「仮面舞踏会」、ホルンのためのエレジー、フルート・ソナタ、そして三重奏曲。
 いずれもピアノはプーランク自身。テヴェ、ランパル、ピエルロ、アラールと 当時のフランスの管楽器の名手たちによる演奏です。

 久しぶりに取り出し、聞いていた私。
 そして「百曲一所」で取り上げるべし!と思い立ったのです。

 しかし 三重奏曲ではなく、「仮面舞踏会 Le bal masquéを。

 バリトン独唱と、オーボエ、クラリネット、ファゴット、トランペット、ヴァイオリン、チェロ、打楽器という室内アンサンブルのための世俗カンタータ。
 1932年 テアトル-ド-イエールにおけるコンサートのために、ドゥ ノアイユ子爵夫妻から委嘱を受けて書かれたもの。

 曲は、前奏と華麗な歌、間奏曲、マルヴィナ、バガテル、盲目の夫人、終曲 の6曲からなります。
 第1曲後半、第3, 5, 6曲が歌。

 私は長く マックス・ジャコブの手になる歌詞の意味を知りませんでしたが、特に問題と感じず、好きでした。
 ナンセンスな小コメディを思わせるような、人を食ったような 奇妙で愉快な気分が楽しい!
 おそらく歌詞には深い内容はないだろうと。

 のちに 歌詞を読むことができましたが、予想は当たっていました。
 それぞれの歌には一貫性はなく、どれも意味がワカラン!

 第1曲の華麗な歌 (Air de bravoure) でも
 “シナの農民が新鮮さを求めて 印刷屋か 隣のシンさんの奥さんのところへ
行く …”
 ???
 しかし フィネフィネフィーネーフィーネ、あるいは シネシネシーネーシーネ (chine) などという語感の面白さによる印象的なフレーズが耳を捉えます。

 一番好きなのは、終曲。
 第1曲と同様、長い器楽演奏あり。
 やはりマヌケな感じのコミカルなものですが、突然 タンゴのような妖しい曲調に変わり、しばらくして歌が始まります。

  Réparateur perclus de vieux automobiles,
  L'anachorète hélas a regagné son nid,
  Par ma barbe je suis trop vieillard pour Paris,
  L'angle de tes maisons m'entre dans les chevilles.
  Mon gilet quadrillé a, dit-on, l'air étrusque
  Et mon chapeau marron va mal avec mes frusques.
  Avis! c'est un placard qu'on a mis sur ma porte.
  Dans ce logis tout sent la peau de chèvre morte.
  Réparateur perclus de vieux automobiles,
  L'anachorète hélas a regagné son nid,
  son nid, son nid, son nid, son nid!

  体の不自由な中古車修理工
  世捨て人は ああ 彼の巣を取り戻した
  私のひげはパリには古過ぎる
  あなたの家の角はわたしの足首をくじく
  わたしの格子柄のチョッキは どうやらエトルリア風で
  栗色の帽子は服に合わないらしい
  警告! わたしの玄関にかかげられたプラカード
  この家は死んだヤギの皮の匂い
  体の不自由な中古車修理工
  世捨て人は ああ 彼の巣を取り戻した
  巣を 巣を 巣を 巣を!

 (今はまた歌詞対訳を持っていないので、英訳などをもとにして自分で訳してみました。参考までに。
  特に m'entre dans les chevilles の部分がよく判りません。)


 ナンセンスで滑稽であると同時に、たぶんに不気味で奇怪な詞。
 それは「マルヴィナ嬢は死んでも扇を離さない」と歌われる第3曲、「目から血を流す盲目の夫人は言葉を選ぶ」と歌われる第5曲でも同様です。

 プーランク自身は「子供の時に見たいくつかの化け物のスケッチを伴うカーニヴァルのようなもの」と言っているとのこと。
 いろいろ想像を掻き立てられますが、真意は判らない。
 しかし それでも 調子の鮮やかな変化、色彩感。洗練と猥雑が交錯する、一種エキセントリックな諧謔性はまさしくプーランクならではのもの。
 それは私にとっては かっこよくて愛すべきものです。

 久しぶりの <特にここが好き!> は、その終曲の最後、早口でレチタティーヴォ風にまくし立てたあと、最後の最後、son nid の繰り返す部分にいたしましょう。
 コミカルな緊張感がクライマックスを築きあげています。

 この曲を好きになったのは、バリトン歌手 ピエール・ベルナクのうまさも大きい。
 イタリア風の音吐朗々と歌うスタイルとはまったく違った、フランス風の軽い歌い方。ポップスにも通じるような。
 また現代の歌手のように 知性と訓練が邪魔にならず、バカになりきり、大胆な表現力を駆使して 曲の精神 (エスプリ) を伝えてくれるのです。
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 21:47
comments(0), -
スポンサーサイト
author:スポンサードリンク, category:-, 21:47
-, -
Comment