先日 家に帰る地下鉄内。正面に座っているオジサンを見てビックリ!
在日韓国人3世で、日韓・日朝関係に関する著書があり、TVなどの出演も
多い 朴 一(パク イル)氏ではありませんか!
早速ケータイのメールで奥さんに知らせる私。
「ホンモノ?」と尋ねる返事。
確かに似ている別のオジサンかもしれない。
本人に尋ねるべきか…。
どこで降りるのか様子を伺う。
正面に座っている男にチラチラ見られていることをまったく気にすることも
なく、ボーっとしているパク氏。
あびこ駅でついに立った! ドアの前に立つパク氏。
「すみません。パク・イルさんですか?」 聞いた!
「はい、そうです。」とパク氏。
「やっぱり!」
…
そのあと何も言葉が出ずに、お辞儀を繰り返すだけの私。
降車された後、なんと言えばよかったかのひとり反省会。
「私、どちらかというとコンサヴァティヴなんですが、パクさんの軽妙な
センス好きなんです。<そこまで言って委員会> での“また三宅さんに怒られ
に来ますわ”とか“その考えは天地真理です”とか、ヨンさまの物まねとか、
最高ですわ。」とでも?
パクさんは大阪市立大学の教授だったのですね。
また会う可能性はありそう。
今度会ったら思い切って言ってみましょうか?
●●赤毛の子細●●
以前、父はBSで録画したオペラなどをDVDにダビングして よく送って
きてくれていました。
当時うちではBSが見られなかったため ありがたかったのですが、すべてを
見ることができずにいました。
先日ふと ひとつ見てみようと思い立ち、選んだのが「後宮からの逃走」。
コンスタンツェにマリン・ハルテリウス、指揮はクリストフ・ケーニヒ、
2003年 チューリヒ歌劇場の公演です。
この公演、奇抜な演出に惑わされずに モーツァルトの音楽と歌手の歌を鑑賞
できるのがいい(ただし舞台袖の歌手の様子を写したりするカメラワークは
特徴的)。
特にブロンデのパトリシア・プティボン、オスミンのアルフレート・ムフが
光っているな と見ていました。
家事のかたわら、時折TV画面をじっと覗き込む奥さん。
奥さんはオペラにはまったく興味はないのですが、私がオペラを見ていると
必ずおこなう奥さんの習性です。
というのも、奥さん一番の趣味はファッションでして、衣装、それから歌手
の姿なんかが気になるのです。
どうやらハルテリウスとプティボンの美人コンビに興味深々のよう。
とりわけプティボンの可愛らしさと感情豊かな演技がお気に召したようで、
「赤毛ちゃん」と命名。
年を尋ねるので ネットで調べてみると、奥さんとひとつ違いの1970年生まれ。
当時33歳。
画像検索などしながら、不思議ちゃん系のポートレイトを使って売り出して
いたことなどを説明していました。
他方 何度か来日してリサイタルを行なっていることを知ります。
コンサートの感想を書かれている方のHPを覗かせていただくと、珍しい曲
を多く含む20世紀の歌曲リサイタル(2008年4月、王子ホール)。
こりゃ渋いプログラムをやったもんだなぁ〜などと思っておりました。
さて次の日。11日の午前10時半頃。
BSをつけてみると「クラシック倶楽部」。
椅子に座って打楽器を鳴らしながら歌を歌う女性。
まさかプティボン!?
いや 似ているけど、プティボンほど美人ではないし、体がでかい。
前衛専門の知らない歌手だろう。
「赤毛ちゃんやん」と奥さん。
確かに 少し年をとって、腰に肉の付いたプティボンでした。
なんと昨日覗いていたHPの方が書かれていたコンサートを放映していた
のです。
なんたる偶然とビックリする私と奥さん。
しかしコンサートの内容も驚くべきものでした。
まず表現が豊か。
彼女は確かにコロラトゥーラ歌手ですが、決して軽い響きではなく、充分
肉感ある歌ですよね。
そうした歌で感情を大きく表現し、声色も駆使、悲しみも喜びも愛らしさも
茶目っ気もすべてが大きい。
しかも先ほど書いたとおり、いくつかの曲でいろいろな打楽器を打ち鳴らす
のです。
アメリカ古謡集では(その途中から見たのですが)、いくつかの楽器を
とっかえひっかえ。
「オーベルニュの歌」の「わたしには恋人がない」ではタンバリン。
サティの「ブロンズ像」では、おかしな眼鏡をかけて、おもちゃの笛を吹く。
次の「ダフェネオ」では、黒い丸い鼻を。
ともに動物に変装しているわけですね。
アメリカ古謡集の「チンガリング・チョー」では、舞台を動き回り、派手な
アクション。
その曲の終わりには、ピアニストのマチェイ・ピクルスキとともにケッタイな
ミニ・コントを披露。しかも日本語で!
コントの最後には観客に向かって「オペラ・シンガー、です。」と。
奥さんに どういう意味で言ったと思うか尋ねてみると、「こんな馬鹿馬鹿
しいことやっているけど、レッキとしたオペラ歌手だ」という意味だと。
正解でしょうね。
しかし私はそれとともに、歌曲や宗教曲を中心とした歌手ではなく オペラ
歌手なので、こんなに感情豊かで、演劇的なコンサートなのです、という意味も
思い浮かびました。
それにしてもピアニストも合の手を歌わされたり、コントに付き合わされたり
大変だなぁと。
ずっとコンビを組んでいて気心が知れているのだろうか?
最後の曲(アンコール曲でしょうか)、アブルゲルの「愛してる」に その
答えがありました。
夜の女王のようなコロラトゥーラで 男に捨てられた悲しみと、それでも
激しく燃え上がる愛を訴える滑稽な曲なのですが、ここでもプティボンは
舞台を駆け回るわ、TVカメラに向かって大げさなポーズをとるわ、挙句の
果てには舞台を下りて、客にちょっかいをかけるわ…。
不思議なのはプティボンの手に丸めた大きな紙があること。
曲の終盤、その紙がパッと開かれるのですが、そこにはカタカナで
「マチェイ・ピクルスキ」の文字と、ヘンテコな似顔絵。
そしてプティボンは日本語で「愛してます!」
なるほど、ふたりは恋人同士というわけですね。
演奏が終わると、ピクルスキはプティボンの写真のあるパンフレットを
開けて持っていました。
途中からだったのは残念でしたが、それでもプティボンのおちゃめなパーソ
ナリティと 達者なエンタテイナーぶり、そしてピクルスキとのラブラブぶりを
知ることができる素晴らしいコンサートでした。