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♪Questo♪Momento♪ 第75番「海神の馬車 空を駆ける」
 レスピーギの <ローマ三部作> は大変な人気曲ですが、私は昔 好きではありませんでした。
 昔の購入CDリストを確認してみますと、やはりトスカニーニを持っていただけです。あとクラウス=WPの「噴水」。
 若い頃に その派手なオーケストレイションが好きではなかったというのは、自分でも不思議な気がします。「松」でサヨナキドリの鳴き声のテープを使うというのも、なんか反則技みたいに感じていました。「古い舞曲とアリア」や「鳥」「ボッティチェッリ」のほうがよっぽど好きだった。

 しかし ここ数年で好きになってきたのです。通俗名曲は 年を取るにつれ聞かなくなっていくものですが、正反対。あまり聞いていなかったため新鮮ということなのでしょう。

 そして先日、サージェント、グーセンス=ロンドン響のCD(EVEREST)を聞いてから、あるメロディがずっと頭にこびりついてしまいました。
 今までにも、特に好きというわけでもないのに「フィンガルの洞窟」とか「イタリアのハロルド」などの一節が長い間 頭にこびりついて、なんでやねん… と思ったことがあったのですが、それらとは違ってどうやら好きみたい。
 ステレオの前まで行って、指揮者の真似ごとなんかしちゃったら、もうこりゃ好きではないとは言えない。

 ちょうど いつもお世話になっている お客様(同世代のかた)とのメールのやりとりで、昔は気恥ずかしくて避けていたルロイ・アンダーソンに抵抗がなくなってきたとおっしゃっていたのですが、私は <ローマ三部作> がよく似た感覚であることをお話ししました。

 「ローマの噴水」の第3曲「昼のトレヴィの噴水」

 3/4拍子ながら ファンファーレ的に金管が咆哮する壮麗な曲。
 まずコールアングレとファゴットが先導役となッて、上昇する動機がさまざまな楽器に受け継がれていき、次第に明るく華やかな雰囲気に。
 うねり逆巻くヴァイオリンの上に、トランペットを中心とした金管群が堂々とした輝かしい主題を奏する。



 ここの部分 カッコイイ!
 昼の強い日差しに噴水の水しぶきが光り輝く。きらびやかな海神の馬車が 跳ねる人魚たちの行列を従えて空を駆けていく ---
 バッカナールを思わせる高揚は最高潮に達したあと、次第に衰える日光とともに徐々に雲散霧消していく。夢まぼろしだったかのように。
 しかしあの華やかな音がクラリネットなどで浮かび上がってくる ---



 この部分も幻想的でいいですよねぇ。
 そして終曲「たそがれのメディチ家の噴水」へと続く。

 「昼のトレヴィの噴水」を ライナー=シカゴ響 (59年)、サージェント=ロンドン響 (60年)、小澤=ボストン響 (77年),デュトワ=モントリオール響 (82年),ムーティ=フラデルフィア管 (84年) で聞き比べてみました。

 と思ったら、ステレオ装置 (スピーカーはSTIRLING) のプレイヤーがディスクを読み取らないではありませんか! よりによってこんなタイミングで…。
 気持ちは一旦萎えましたが、奮い起こして手元のCDラジカセで。

 ライナーはXRCD2盤。ライナーの強力な統率力を感じさせる雄渾な演奏。分厚い音、力のこもった音、大迫力のサウンド。強引なアゴーギクはなし。管楽器の音色に多少違和感があるものの、奏者の技術、アンサンブルの精度は現代ほどではないにしても かなりいい。後半部分 CALMO でもセカセカすることなく落ち着いている。そしてXRCD2の威力はCDラジカセでも明らか。

 サージェントは遅めのテンポをとっているのが珍しい。序奏的部分はともかく 主部的なALL.VIVACEに入ってもテンポが速くならない。ライナーと比べれば手綱の引き締め具合は相当緩いものの、おおらかでおっとりとした演奏に味を感じる。こんな演奏 他にあるのだろうか。そしてEVERESTの35MMウルトラアナログの独特の音響もセールスポイント。

 小澤征爾は 落ち着いたテンポ。軽めのサウンドで、線は細め。ニュートラルで、オーソドックスと言えると思う。

 デュトワは 序奏的な部分はテンポが遅く粘り、ALL.VIVACEでテンポを速める。薄めで明るい響き。録音の加減もあろうが、金管楽器が前面に出ることがない。こうした曲でもパステル調を感じさせる涼しげなサウンドが独特。思えば <ローマ三部作> が近年好きになってきたきっかけは ラヴェルやドビュッシーの延長上にあるようなこのシックな演奏から。

 ムーティは もちろん力感はあるものの 燃える演奏という感じではなく どちらかといえば落ち着いている。強引なドライヴなし。ただ1分ほどのPIU VIVACE RITMO DI 3 MISURE (IN UNO) でのテンポが速まる感じは一番顕著。そして近代的なオケの精緻さはこれが一番と感じる。それを駆使して この曲の大音響の面白さを美しいサウンドで楽しませてくれる。

 それぞれ面白い演奏です。予想とは違っていたりいて 楽しみました。こうした聞き比べはCDの大きな楽しみのひとつですね。昔はブログで時々やっていた演奏比較、商売となってからはさすがにできませんが、今回は「トレヴィ」の部分のみ、そして悪いようには書かないという前提でやってみました。

 しかしCDプレイヤーが治ったら STIRLINGでもう一度聞き比べてみるべきかもしれません。
author:, category:♪この曲の♪ここが好き♪(百曲一所), 01:07
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